老犬がよくかかる甲状腺機能低下症とは?症状と治療法を解説

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いぬどし
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「老化とともに愛犬の元気がなくなってきた。」
「老犬になるにつれて太りやすくなっている。」

飼っている犬にこのような症状が現れてきていませんか?

犬も人間と同じように年を取るにつれて、身体に色んな変化が起こります。その変化が病気のせいなのか何なのか確かめることは、健康で幸せな生活を送るために重要です。

この記事では、老犬がかかりやすく、かつ、診断することが難しい甲状腺機能低下症について解説します。甲状腺機能低下症は適切に治療することで、比較的容易に改善することができます。

「もう老犬だから仕方ない」と思える状態でも、病気がわかれば治療し、改善できる可能性はあります。まずは、その症状が甲状腺機能低下症でないか疑い、動物病院に相談することをおすすめします。

 

老犬の甲状腺機能低下症とは?

 

犬も人間と同じように高齢になるにつれて病気にかかりやすくなります。老犬がかかりやすい病気の一つに甲状腺機能低下症があります。

甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの分泌が少なることによって引き起こされる病気です…とは言っても、あまりピンとこない人も多いでしょう。

まずは、「甲状腺とは何か?」、「何が原因で、どんな症状なのか?」、「甲状腺機能低下症になりやすい犬種はいるのか?」について解説していきます。

 

甲状腺は喉にある内分泌器官

 

甲状腺は、喉にある内分泌器官であり、人間にも犬にも共通して存在します。喉のHの形(蝶の形)をした部分が甲状腺です。

甲状腺のイラスト

ホルモンを作る臓器のことを内分泌器官と呼び、甲状腺も内分泌器官の一つです。甲状腺では、甲状腺ホルモンが作られています。

甲状腺機能低下症は、この甲状腺が正常に機能せず、甲状腺ホルモンが適切に分泌されないことによって引き起こされます。

 

甲状腺ホルモンの役割

 

甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を促進する作用があります。

人間も犬も活動するためにはエネルギーが必要です。食べ物から摂取したたんぱく質や脂肪、炭水化物をエネルギーへ変換するために代謝が行われます。このエネルギーを生み出す過程を促進するのが、甲状腺ホルモンであり、活動において必要不可欠な要素です。

甲状腺ホルモンには、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)の2種類があります。通常、これらが脳からの指令に応じて血中を巡り、全身へ届けられることで代謝がコントロールされています。

甲状腺機能低下症は、この甲状腺の機能が低下することで、代謝機能が低下する病気のことを言います。

この症状とは逆で、甲状腺からの甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気もあります。これは甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)と言います。甲状腺機能亢進症は、猫によくみられる症状ですが、犬にはあまりみられません。

 

犬の甲状腺機能低下症の症状

 

甲状腺は「代謝」を促進することが主な役割であるため、その機能が低下するということは、単純に代謝が悪くなるということを意味します。

老犬に現れる甲状腺機能低下の症状も、人間と同じように考えれば、ある程度予想はつくでしょう。代謝が悪くなることでみられる具体的な症状を以下に挙げます。

・元気消失
・疲れやすい
・太りやすい
・体温低下
・寒さに弱くなる
・体の左右対称の脱毛や尾の脱毛
・皮膚の色素沈着や乾燥
など

これらの症状は、甲状腺機能低下症に特有のものではありません。また、場合によって現れる症状やその重さが異なります。

一般に、これらの症状は「高齢化とともに現れた変化」であると捉えられがちです。したがって、甲状腺機能低下症は、気が付くのが難しい病気と言えます。

 

甲状腺機能低下症の原因

 

甲状腺機能低下症の原因は、自己免疫疾患と言われています。自己免疫疾患とは、免疫機能が正常に働かなくなり、自分自身を攻撃してしまう病気です。甲状腺機能低下症では、免疫の過剰な働きによって甲状腺が破壊されてしまうことが原因でなります。

甲状腺機能低下が起こりやすくなるような明確な原因は存在しません。高齢化による身体の変化の中で誰にでも起こり得る可能性があります。

 

かかりやすい犬種は?

 

人間の場合、女性のほうが甲状腺機能低下症にかかりやすいと言われています。一方、犬の場合、性別で差はありません。

しかし、身体が大きい犬のほうがかかりやすい傾向があるようです。具体的には、中型犬から大型犬で多く、コッカースパニエル、ゴールデンレトリーバー、ボクサー、などがかかりやすい犬種といわれています。

 

予防法はない?

 

現在、甲状腺機能低下症に関する予防法は知られていません。老化以外の明確な原因がないため、対策の使用がないのです。

したがって、早期に愛犬の異変を察知することが重要で、それ以上悪化しないように治療をする必要があります。少しでも気になる症状がある場合は、動物病院をすぐに受診することをおすすめします。

「もうシニア犬だから元気がない」、「老犬だから寒がりだ」など、何でも高齢のせいにして、病気のサインを見逃さないようにしましょう。

 

老犬によくある甲状腺機能低下症の対処方法

だるい犬のイラスト

ここまで、甲状腺機能低下症の概要について解説しました。

以降は、甲状腺機能低下症の検査方法と治療方法について解説します。いずれも、動物病院の獣医師の判断で進められるため、飼い主が知っておく必要はありません。しかし、頭の片隅にあることで、いざ愛犬が甲状腺機能低下症になってしまったときに冷静に事態を受け止められるでしょう。

 

検査の方法

 

甲状腺機能低下症は血液検査によって診断します。血液中のホルモンを調べることによって、ホルモンが正常に機能しているのか確かめます。

甲状腺機能の検査では、主に3つのホルモンの指標に注目されます。

・サイロキシン(T4)
・遊離サイロキシン(FT4)
・甲状腺刺激ホルモン(TSH)

サイロキシンと遊離サイロキシンは血液中で結合の状態が異なるだけの違いです。血液中のこれらの値を測定することで、甲状腺ホルモンの分泌量がわかります。特に、犬の場合は、遊離サイロキシンの値が甲状腺機能低下症の診断に有用であると言われています。

甲状腺刺激ホルモンは、脳から分泌され、甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンを分泌させる役割があります。甲状腺刺激ホルモンが少なければ、甲状腺ホルモンも少なくなります。

したがって、甲状腺機能が低下する以下の2つの要因について、血液中の甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンを測定することで診断することができます。

・甲状腺自体の機能が弱まり、甲状腺ホルモンが少ない
・脳からの甲状腺刺激ホルモンが少なく、甲状腺ホルモンが少ない

 

甲状腺機能低下症の確定診断は難しい

 

上記の検査方法で、甲状腺ホルモンの測定をすることはできますが、甲状腺自体や甲状腺刺激ホルモン以外の要因で甲状腺ホルモンが低下することもあります。したがって、甲状腺ホルモンの値が低下しているからといって、甲状腺機能低下症であると断定することはできないのです。

甲状腺ホルモンに影響を与える病気はいくつもあります。

・腫瘍
・心臓病
・貧血
・糖尿病
・クッシング症候群
など

甲状腺自体は正常でも、これらの疾患の影響で甲状腺ホルモンの値が低くなることがあります。また、他の病気の治療薬の影響で甲状腺ホルモンの値が低くなることもあります。

他の病気の可能性を除外、もしくは、治療して、初めて甲状腺機能低下症の診断をすることができます。

 

甲状腺機能低下症の治療法

 

甲状腺機能低下症の治療は投薬が一般的です。薬を飲むことで、不足している甲状腺ホルモンを補い、血液中の甲状腺ホルモンの値を高くします。

失われた甲状腺の機能は、基本的に回復することはありません。したがって、治療薬を飲んだからと言って治るものではなく、一生涯にわたって薬を飲み続けることになるでしょう。

ただ、甲状腺機能低下症の場合、薬さえ適切に服用していれば、問題なく元気な状態に戻って生活が送れることがほとんどです。老犬の疾患の中では比較的治療しやすい疾患であると言われています。また、薬による副作用も犬の場合はほとんどないとされています。

甲状腺機能低下症と診断されても焦らず、動物病院の獣医師と相談しながら適切に対処しましょう。甲状腺ホルモンの良好なコントロールをするためには、定期的に血液中の甲状腺ホルモンを測定し、投薬量が適量かどうかを確認する必要があります。

 

まとめ:老犬の異変は甲状腺機能低下症が原因かも

太っている犬のイラスト

この記事では、老犬がなりやすい病気の一つである甲状腺機能低下症について、その症状から対処方法について解説しました。以下にポイントをまとめます。

・甲状腺は代謝を促進する役割を持つ
・甲状腺機能低下症の症状と老化による変化の見分けが難しい
・予防法はない
・検査をしても甲状腺機能低下症の確定診断は難しい
・甲状腺機能低下症と診断されても、投薬により治療することができる