普段あまり水を飲まない老犬が、運動後でもないのにたくさん水を飲むようになったら心配になりますよね?
とはいえ、「水をたくさん飲むこと以外に問題は無さそうだから、何日か様子を見よう」とそれほど深刻に考えない飼い主さんもいるかもしれません。
しかし、慢性腎不全についての正しい知識を持っていれば、すぐに動物病院に連れて行くことを考えるでしょう。
この記事では、以下のことについて解説します。
・腎不全の種類や症状
・腎不全の原因
・腎不全の検査方法
・腎不全の5つの治療方法
・腎不全の予防法
この記事を参考に腎不全についての正しい知識を身につけ、老犬の腎不全の早期発見・早期治療を心がけましょう。
目次
犬の腎不全の種類
腎不全とは、腎臓の機能が失われた状態のことを指します。犬の腎不全は、がんや心臓病に次いで多く、特に老犬は注意しなければならない病気です。
犬の腎不全は、原因や進行スピードの違いから、慢性腎不全と急性腎不全に分けられます。ちなみに、腎不全は従来の呼び方で、現在は慢性腎臓病や急性腎障害と記載されていることもあります。
慢性腎不全
犬の慢性腎不全は、数週間から数年かけてゆっくり腎臓の機能が失われていく病気です。徐々に腎臓の機能が失われるので、初期症状がないことが多く、飼い主が気づくころには70%程度の機能が失われていることも少なくありません。
腎臓の機能は、ある程度まで低下してしまうと、完全に元に戻すのは難しいと言われています。そのため、慢性腎不全を完治させるのは非常に困難です。
それでも、できるだけ早い段階で病気に気づき、それ以上腎不全が進行しないようにすることは重要です。完治はできないまでも、うまくケアすれば長生きするケースもあります。
急性腎不全
犬の急性腎不全は、数時間から数日の間に腎臓の機能が急激に低下する病気です。症状が悪化するスピードがとても速く、死に至る可能性もあります。
しかし、急性腎不全は症状が出てから速やかに適切な対処ができれば、腎臓の機能を回復させることができます。そのため、早期発見・早期治療が大切なのです。
ただし、治療がうまくいかなければ、慢性腎不全に移行する場合もあります。
犬の腎不全の症状
犬の腎不全の特徴的な症状は、“水を飲む量の変化”と“尿量の変化”です。初期の段階では、慢性でも急性でも飲水量と尿量が増えます。その後腎不全が進行すると、尿量が減ったり、尿が出なくなったりする尿毒症を発症するのです。
水の飲む量に関してはこちらの記事を参照ください↓↓
このほかにも、犬の腎不全では以下のような症状が現れます。初期と末期では症状が異なるので、それぞれ分けて見ていきましょう。
初期の症状
まず、初期の症状としては次のようなものがあります。
・食欲不振
・元気がない
・下痢
・嘔吐
・脱水
・体重減少
・貧血
慢性腎不全の場合は、初期症状が認識できない期間がありますが、腎不全の進行とともに上記の症状が現れるようになります。これらの症状が続く場合は、1度動物病院を受診してください。
末期の症状
腎不全が進行して重症化すると、次のような症状が現れます。
・体温低下
・意識障害
・痙攣
・電解質異常
・尿毒症
尿毒症とは、本来排出されるはずの老廃物が正常に排出されずに体内に残り、体に悪影響を起こしている状態です。尿毒症の特徴的な症状は、次のようなものがあります。
・口からアンモニア臭がする
・口内炎(口の潰瘍)
・胃腸障害
尿毒症になったときには、すでに腎臓の機能のほとんどが失われている状態です。 尿毒症にならないためにも、早期発見・早期治療を心がけましょう。
犬の腎不全の原因
犬の腎不全の原因はさまざまですが、急性腎不全に比べると慢性腎不全の方が、原因がはっきりしていないことがほとんどです。
この章では、慢性腎不全と急性腎不全それぞれの原因について解説していきます。
慢性腎不全の原因
慢性腎不全の原因は、以下の通りです。
・老化
・遺伝的要因
・先天性疾患
・自己免疫疾患
・急性腎不全や歯の病気などほかの疾患
・過剰な塩分やたんぱく質を含んだ偏った食事
・ガン
ちなみに、慢性腎不全はどの犬種でも発症する可能性がありますが、遺伝的要因から以下の犬種で腎不全のリスクが高いと報告されています。
・ブル・テリア
・イングリッシュ・コッカー・スパニエル
・キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
・シー・ズー
・シャーペイ
急性腎不全の原因
急性腎不全の主な原因は、以下の通りです。
・誤食による中毒
・細菌感染(レプトスピラ症)
・心臓疾患や出血などによる腎臓への血流低下
・尿管結石や膀胱腫瘍による排尿トラブル
犬が食べてしまうと腎不全を引き起こすものとしては、以下のものがあげられます。
・ぶどう
・保冷材などに使用されるエチレングリコール
・鎮痛剤
・除草剤
腎不全の検査方法
腎不全の診断には、主に血液検査と尿検査が行われます。
まず、血液検査で注意したいのが、血液尿素窒素(BUN)とクレアチニン(CRE)の数値です。腎不全であれば、この2つの数値が正常値よりも高くなります。
ただし、腎臓の機能が70〜80%程度失われてからでないと、これらの数値は高くなりません。
そのため、血液検査と合わせて尿検査もおこなわれます。
尿検査で注意したいのは、尿比重(水を1.0としたときの尿の重さ)の数値です。本来、尿には老廃物が混ざっているため、尿比重は1.0より少し高くなります。しかし、腎不全の場合は老廃物を尿として正常に排せつできないので、尿が薄くなり、通常より尿比重の数値が低くなるのです。
このほかにも、必要であれば超音波検査やレントゲン検査をすることがあります。
腎不全の5つの治療方法
慢性腎不全は、上記で説明した通り完治させることはできません。そのため、腎不全の進行を遅らせ、老犬のQOL(生活の質)を維持し、より長く快適に生活できることを目的として治療が行われます。
一方急性腎不全の場合は、完治を目標に、動物病院での緊急的かつ集中的な治療が行われるのです。
ここでは、腎不全の5つの治療方法を詳しく解説します。
1. 食事療法
慢性腎不全の治療として、最も一般的なのが食事療法です。腎不全では、腎臓に負担をかけないのが1番。
そのため、タンパク質やリン・カルシウムなどのミネラルの量が制限された療法食に切り替えます。また、ジャーキーや煮干しなどのおやつは腎臓に負担がかかるのでおすすめしません。
とはいえ、腎不全の犬は食欲が落ちていることが多く、療法食になったことで食べなくなることもあるでしょう。そんなときは、ドライフードからウェットフードに変えたり、『低たんぱく・低ミネラル』を条件におやつや野菜などを少量トッピングしたりするとよいでしょう。
2. 点滴(輸液療法)
慢性腎不全の治療には、食事療法だけでなく定期的な皮下点滴も推奨されています。皮下点滴は、腎機能の低下によって、大量の尿と一緒に排せつされた水分を補う役割があります。
皮下点滴は、血管に直接点滴剤を入れるのではなく皮膚の下に針を刺せばよいので、飼い主さんも自宅でやることが可能です。動物病院が苦手な老犬にとってはストレス軽減になるので、希望する場合は獣医師に相談してみましょう。
一方、急性腎不全では静脈点滴が中心に行われ、腎臓への血流の確保、血液中のpHの調整などを行います。静脈点滴を行うには、基本的に入院が必要です。
3. 薬物療法
点滴だけでは改善しない症状に対しては、投薬治療が行われます。薬の目的はさまざまで、具体的に処方される薬には、次のようなものがあります。
・尿の排せつを促す利尿剤
・吐き気をおさえる制吐剤
・血圧をおさえる降圧剤
・タンパク質やリンを吸着し、便として排出させるための吸着炭製剤・リン吸着剤
・感染の治療のための抗生剤
4. 透析
透析は、一般的に急性腎不全の場合に行われます。透析には、腹膜透析と血液透析がありますが、血液透析は専用の機械設備が無ければ実施できません。
血液透析とは、血液を1度体の外に出し、ダイアライザーと呼ばれる透析器を通して、きれいになった血液を体に戻す治療法です。血液透析では、数時間の透析を数日おきにおこなう必要があります。
このため、老犬にも飼い主さんにも大きな負担がかかります。透析の治療をおこなうかは、獣医師とよく相談したうえで判断しましょう。
5. 外科手術
腎不全の原因がはっきり分かっている場合は、外科手術によってその原因を取り除く治療法もあります。腫瘍や尿管結石などの病気だけが腎不全の原因であった場合は、手術することで腎不全の回復が期待できるでしょう。
また、腎臓移植をおこなっている病院もありますが、ドナーの問題や術後の管理などさまざまな課題も多く、現実的な治療法としては確立されていません。
犬の腎不全の予防法
腎不全には、老化や遺伝的要因など予防できないものもあります。しかし、ワクチンによる細菌感染の予防や毎日の歯磨きによる歯周病の予防など、飼い主さんの努力次第では腎不全のリスクを減らせるのです。
このほかにも、以下のような予防法があるので、腎臓が元気なうちから実践しましょう。
食事
毎日の食事で腎不全を予防するために大切なのは、腎臓に負担をかけないこと。そのためには、次の3つの摂りすぎに注意しましょう。
・タンパク質
・リン
・ナトリウム
ただし、老犬ではタンパク質の摂取量を制限すると、筋力量や免疫力の低下につながります。腎不全を防ぐだけでなく、健康を維持することも重要です。そのため、タンパク質をやみくもに避けることはやめましょう。
逆に、オメガ3脂肪酸や食物繊維を含む食べものは、腎臓を保護すると言われています。オメガ3脂肪酸の中でも魚に含まれるEPAやDHAは、認知症予防の効果も期待されているので、特にシニア犬にはおすすめです。
環境整備
腎不全の予防のためには、生活環境にも気をつけましょう。具体的には、以下のような対策をとることができます。
・部屋を適温に保つ
・中毒を起こす食べ物を誤食させないため、キッチンに入れないようにする
・ストレスをかけないため、静かな場所に寝床を作る
・いつでも新鮮な水が飲めるようにする
水を飲む量が減りやすい老犬の場合は、犬用ミルクやヨーグルトなどで水に味をつけてみましょう。
健康診断
どれだけ飼い主さんが日ごろの観察を徹底していても、慢性腎不全を早期に発見するのは難しいもの。だからこそ、動物病院での定期的な健康診断が大切です。
シニア期の(小型犬・中型犬:7歳、大型犬:5歳)健康診断の頻度としては、半年に1回がよいとされています。しかし、5~7歳であればまだまだ元気な犬も多いですよね?
「元気そうだから、まだ健康診断の必要はないだろう」と考える飼い主さんも多いと思います。ただ、犬は人間よりも年をとるスピードが速く、1年で4~7歳も年をとるということを忘れないようにしましょう。
動物病院によっては、通常よりも安く健康診断が受けられるキャンペーンを実施していることもあるので、気になる人はぜひ聞いてみてください。
まとめ:老犬に多い慢性腎不全は早期発見と早期治療が大切
この記事では、慢性腎不全と急性腎不全について解説しました。
最後にもう1度、この記事のポイントをまとめておきます。
・腎不全の特徴的な症状は“飲水量の変化”と“尿量の変化”
・腎不全の原因はさまざま
・腎不全の検査方法は尿検査と血液検査
・腎不全の治療方法は食事療法や薬物療法など
・腎不全の予防のポイントは、食事・環境整備・健康診断
治療が難しい腎不全は、早期発見・早期治療が大切です。この記事を参考に日ごろから予防しつつ、腎不全の小さなサインを見逃さないようにしましょう。
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