老犬が起き上がれない原因は?介護やケアについても解説

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昨日まで自力で歩いていた老犬が、突然起き上がれなくなったら心配になりますよね?

「重い病気だったらどうしよう」

「起き上がれなくなったときのケアはどうしたらいいの?」

などと不安になる飼い主さんも多いことでしょう。

 

しかし、老犬が起き上がれなくなる原因やそのときの対処法などの知識を身につければ、過度に心配する必要はありません。

この記事では、老犬が起き上がれなくなる原因やそのときに起こると予想される問題について紹介したうえで、それぞれの対処法、予防法を解説します。適切な対処法や予防法を理解し、愛犬のためにできることから始めましょう。

 

老犬が起き上がれなくなったときに考えられる原因

老犬が急に立てなくなる原因で、飼い主さんが1番最初に思いつくのは加齢によるものかもしれません。確かに老犬も人間と同じように、筋力が衰えていくことによって自力で起き上がれなくなることがあります。

しかし、もちろんそれだけが原因ではなく、命にかかわる病気によって起き上がれなくなることもあるので注意が必要です。

そこでこの章では、老犬が起き上がれなくなったときに考えられる原因を5つ紹介します。

 

関節疾患

ひじやひざなどの関節に痛みが出る関節疾患は、老犬がかかりやすい病気の1つです。骨と骨の間でクッションの役割を果たす関節軟骨は、年齢とともにすり減ることで炎症が起きてしまいます。

そんな関節症を発症した老犬は、立とうとするたびに痛みが出ることで起き上がれなくなるのです。もっというと、痛みを避けるために犬自身が起き上がらないようにするのです。

起き上がれなくなる以外に、関節疾患の老犬で見られる症状には以下のようなものがあります。

・歩き方がおかしい、普段と違う

・散歩の途中で座り込む

・階段の上り下りをしたがらない

・食欲が低下する

・(触られると痛いから)飼い主に攻撃的になる

 

関節疾患は命にかかわる病気ではありませんが、体を動かすたびに痛みが出るので、老犬にとっては非常につらいものです。

 

脳疾患

脳梗塞や脳腫瘍などの脳の病気は、起き上がれなくなるだけでなく、死に至ることもある病気です。これらは、免疫力が低下する老犬で発症しやすくなっています。

なかでも、脳腫瘍は、腫瘍が小さいうちは症状が見られないこともあります。しかし、大きくなると腫瘍ができた部位によってさまざまな神経症状が見られるようになるのです。

起き上がれなくなる以外に、脳疾患の老犬で見られる症状には以下のようなものがあります。

・痙攣

・首が傾く

・眼振

・意識障害

・性格の変化

 

脳疾患は、早期発見が難しい病気です。そのため、上記のような小さなサインも見逃さないように日ごろから老犬をよく観察しましょう。

 

脊髄疾患

変形性脊椎性や椎間板ヘルニアなどの背骨の病気は、高齢の犬でよく見られます。なかでも、ミニチュア・ダックスフンドやウェルシュ・コーギーなどの胴の長い犬種は要注意です。

変形性脊椎症では背骨の中の椎骨が変形することで、椎間板ヘルニアでは椎骨と椎骨の間にある椎間板が変形することで、脊髄が圧迫されて痛みや麻痺が生じます。脊髄の中を通る神経は、運動機能を支配しているため起き上がれなくなることがあるのです。

起き上がれなくなる以外に、脊髄疾患の老犬で見られる症状には以下のようなものがあります。

・背中を丸めて歩く

・散歩に行きたがらない

・しっぽを振らない

・首や背中を触るとなく

・排尿・排泄のコントロールができない

 

椎骨や椎間板の変形は、たいてい背骨の真ん中あたりで起こるので、後ろ足の痛みや麻痺が多く見られます。しかし、首のあたりで変形した場合は、前足または4本ともに影響が出ます。

 

中毒

ボツリヌス菌が作る神経毒やキシリトールによる中毒によっても、起き上がれなくなることがあるので注意が必要です。特に、ボツリヌス中毒では死亡するケースもあります。

起き上がれなくなる以外に、中毒の老犬で見られる症状には以下のようなものがあります。

・後肢から前肢に向かう麻痺

・呼吸困難

・嚥下困難

・ふらつく

・体温が低下する

 

人間にとっては問題がない食べ物であっても、犬にとっては害となる食べ物がたくさんあるので注意しましょう。

 

加齢による筋肉の衰え

年をとると犬も、人間と同じように筋肉が衰えて、自力で立てなくなる場合があります。この理由は、寝る時間が増えることによって運動量が少なくなるからです。さらに寝たきりになると、急激に筋肉は衰えてしまいます。

筋肉が衰えた老犬で、寝たきりになる前に見られるサインには以下のようなものがあります。

・歩くスピードが遅くなる

・腰が下がる

・足を引きずる

・つまずきやすくなる

・食欲が低下する

 

加齢によって筋肉が衰えるのは、ある程度仕方がないことです。そのため、完全に予防できるわけではありません。しかし、筋力が低下するスピードを遅くすることはできます。筋肉の衰えを防ぐ具体的な方法は後で説明しますね。

 

老犬が起き上がれなくなったら

ここまでを読んで「加齢による筋肉の衰えが起き上がれなくなる原因だった場合は、病気ではないのだから病院に行かなくても、いったん様子見でよいのでは?」と思った飼い主さんもいるかもしれません。しかし、飼い主さんが原因を判断するのは難しく、病気が原因であれば一刻も早い対応をする必要があります。

この章では、飼い主さんがやるべきことに加えて、その時に発生する問題と対処法についても解説します。

 

まずは病院へ

老犬が起き上がれなくなったら、できるだけ早く動物病院に連れて行くようにしてください。起き上がれなくなる原因となる病気の中には、時間がたてばたつほど状態が悪くなるものもあります。

「愛犬の様子がいつもと違うな」と思ったら、「老化のせいだろう」と決めつけずに、できるだけ早く獣医師の診断を受けてください。そうすることで、老犬は早い段階で適切な治療やケアが受けられるし、飼い主さんも原因が分かって安心し、やるべきことが明確になるでしょう。

 

さまざまな介護が必要になる

老犬が起き上がれなくなったら、飼い主さんがやらなければならない介護が増えます。なかでもよく言われるのが“寝返り”です。これは床ずれ防止のために行うもので、一般的に、寝返りをさせる間隔は2~3時間とされています。

その次は、排せつの介護です。自力で起き上がれなくなった犬でも、立った状態でないと排せつしない犬もいるので、その場合は体を支えてあげる必要があります。また、寝たまま排せつをした場合は、体を清潔に保つために汚れを拭きとったり洗い流したりすることも大切です。

これ以外にも、食事や散歩の補助、要求吠えへの対応など、寝たきりになる前と比べるとたくさんの介護が必要になります。老犬の介護は、思っている以上に大変です。飼い主さん自身が疲れ切ってしまう前に、老犬ホームやペットシッターなどのプロの力を借りることも検討しましょう。

 

介護用品をうまく使おう

老犬介護の負担を軽減したいときは、介護用品を使うことをおすすめします。床ずれ防止マットを使えば床ずれができにくくなるし、排せつや散歩のときに介護用ハーネスを使えば、より楽に老犬の体を支えることができます。

さらに、おねしょシーツやドレッシングの容器といった老犬の介護用品として販売されていないものであっても役に立つものもあるので、いろいろ試してみるとよいでしょう。

 

意識的に起き上がらせることも大切

自力で起き上がれなくなった老犬の飼い主さんのなかには「寝返りの介護はするけれど愛犬を立たせることはしていない」という人もいるかもしれません。

実は“立つ姿勢”をとらせることには、次のようなメリットがあります。

・血流改善

・運動

・脳にも体にもよい刺激になる

・床ずれ予防

・食事のときの誤嚥防止

 

”立つ姿勢”をとらせてよいのか分からない場合は、獣医師に相談してみてください。

“立つ姿勢”を維持するために有効なのは、介護用ハーネスや介護用クッション、車いすです。ハーネスやクッションは家にあるもので代用でき、車いすに関してはレンタルできる場合もあるので、まずは試してみるとよいでしょう。

 

老犬が起き上がれなくなるのを予防する方法は?

起き上がれなくなる原因の1つである“病気”を予防するのは、なかなか簡単ではありません。なぜなら、病気を引き起こす原因がさまざまであることや、初期の症状を見分けるのが難しいから。

それでも、飼い主さんができることはあります。そこでこの章では、病気が原因となって起き上がれなくなるのを予防するための方法を見ていきましょう。

 

太らせ過ぎない

関節疾患や脊髄疾患の場合は、肥満にさせないことでリスクを軽減できます。体重が重いということは、それだけ関節や背骨に負担がかかってしまうのです。

さらに、重たい荷物より軽い荷物の方が楽に運ぶことができるように、体重が軽い方が少ない筋肉でも体を支えられたり動かしたりしやすくなるのです。

そのうえで「もうすでに太っている場合はどうやってダイエットさせればよいの?」と思った飼い主さんは、次のようなステップで老犬にダイエットをさせてみてください。

 

ステップ1:獣医師に老犬の適正体重を教えてもらう

ステップ2:適度に運動させる

ステップ3:ジャーキーなどのカロリーの高いおやつを与えない

ステップ4:フードの量を5%程度減らす

ステップ5:シニア用のフードに変える

 

もちろん、必ずしもこの順番、この方法が正しいわけではありません。過度な運動や過度な食事制限は、老犬の健康を損なう可能性もあります。獣医師とよく相談しながら、無理のないダイエットを心がけてください。

 

犬の体に悪いものを食べさせない

食中毒を防ぐには、“犬が食べてはいけないもの”を口に入れさせないようにすることが重要です。具体的には、次のような方法があります。

・ブドウやチョコレートなどは与えない

・食べ残したものを机の上に放置しない

・キッチンに入れないようにする

・人間の食事中はケージに入れる

 

特にボツリヌス中毒の場合は、腐った食べ物や動物の死がいを食べたことで発症するケースが多いので、散歩のときに拾い食いをさせないことが大切です。

また、“犬が食べてはいけないもの”を知っておくことも食中毒の予防にもつながります。ハチミツのように、健康な成犬なら問題ないけれど、免疫力が低下した老犬は避けた方がよい食べ物もあるのです。困ったときは食べさせない、またはネットや本で調べて、少量から与えるようにするとよいでしょう。

 

老犬の筋力の衰えを防ぐためにできること

上記では、起き上がれなくなる原因の1つである“病気”を予防する方法について解説しました。ここでは、老化にともなった筋力の衰えを防ぐためにできることを解説していきます。

 

良質なタンパク質を摂取する

筋肉を作るには、タンパク質が必要です。それなのに、市販のシニア用フードは低タンパク質であることが多いため、焼いた肉や魚をトッピングするなどの工夫が必要な場合もあります。しかし、腎臓病など低タンパク質のフードを処方されている場合は、まずは獣医師に相談してください。

 

散歩

筋力を維持するには、筋肉を使う必要があります。そのため、年をとって歩くのが大変そうだからという理由だけで散歩を控えてはいけません。

もちろん、長時間散歩に行かなければならないわけではなく、無理のないように短時間の散歩を数回に分けて行うことをおすすめします。

散歩に行けない日は、布団やクッションなど不安定なものの上を歩かせたり、おもちゃで一緒に遊んだりして、楽しみながら運動しましょう。

 

マッサージ

マッサージでも筋力の低下を防ぐことができ、以下のような効果があります。

・血行促進

・刺激

・筋肉や関節のコリをほぐす

 

マッサージでは、愛犬の体に直接触れるので異常がないかをチェックすることができるし、愛犬とコミュニケーションもとることができるので、できるだけ毎日やるのがおすすめです。

 

ハイドロセラピー(水中で行う理学療法)

ハイドロセラピーには、以下のような効果があります。

・水の浮力により関節に負担をかけずに運動ができる

・温水により血流が良くなる

・体幹バランスを鍛える

 

ハイドロセラピーができる施設は限られますが、老犬が水嫌いでなければ1度試してみてもよいでしょう。

 

まとめ:老犬が起き上がれないときは動物病院へ

この記事では、老犬が起き上がれなくなる原因やそのときに起こると予想される問題について紹介したうえで、それぞれの対処法、予防法を解説しました。

老犬が起き上がれなくなる原因は、大きく分けて“病気”と“老化”の2つです。そのうち、病気が原因で起き上がれなくなった場合は命にかかわることもあるので、できるだけ早く動物病院を受診するようにしてください。

そうすれば、状態が悪くなる前に、適切な治療やケアが受けられます。とはいえ、治療しても完全に回復できない場合やそもそも対症療法しかできない場合もあります。いつまでも自らの力で立ちあがれるように、ここで紹介した予防法を日ごろから実践しましょう。