老犬の歯周病は治療できる?全身麻酔のリスクや症状、予防法を解説!

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老犬の歯周病は、口の中だけで起こる病気だと思っていませんか?

愛犬の口臭や歯の着色が気になっていても「変わらず元気にモリモリご飯を食べてくれているから問題ないだろう」と思っている飼い主さんも多いことでしょう。

 

しかし、老犬の歯周病について正しい知識を身につければ、歯周病は口だけでなく体全体にも悪影響を及ぼすから、いかに早期治療と予防が大切か分かると思います。

この記事では、老犬が歯周病になりやすい理由、歯周病の原因や症状を紹介した上で、早期発見のポイントや治療について、さらには予防法も解説します。

 

歯周病とはどんな病気?

犬の歯周病とは、その名の通り“歯”の“周り”にある組織の“病気”。もっと詳しく言うと、歯を支えている歯ぐきや骨が、細菌の感染によって壊されていく病気です。

この章ではまず、犬の歯周病について理解するために、歯周病になりやすい犬の特徴や歯周病の原因、症状について見ていきましょう。

 

どうして老犬は歯周病になりやすいの?

歯周病は犬の口腔内疾患の中で最も多く、1歳の犬の90%が罹患しているとも言われています。これを聞くと「1歳すでに多くの犬が歯周病になっているのに、どうして老犬がかかりやすい病気として歯周病があげられるの?」と疑問に思った飼い主さんもいるでしょう。多くの犬が1歳の時点で歯周病になってしまう理由は、毎日歯磨きをしている犬が少ないことと、犬の唾液が歯周病菌が好むアルカリ性であることです。

 

これに加えて、老犬は次のような理由から歯周病になりやすいと言えます。

・免疫力の低下

・唾液分泌量の低下

・水を飲む量の減少

 

歯周病になりやすい犬の特徴

上記で、老犬が歯周病にかかりやすいとされている原因を解説しました。しかし、老犬の他にも歯周病になりやすい犬はたくさんいるので、その特徴をいくつか紹介します。

・歯磨きなどのデンタルケアをしない犬

・やわらかい食べ物を食べる犬

・免疫力が落ちている犬

・乳歯が残ったまま永久歯が生えている犬

 

さらに、22,333頭の犬を対象に行われた研究において、以下の犬種は歯周病になりやすいと報告されました。

・トイ・プードル

・キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル

・グレー・ハウンド

 

また、小型犬や短頭種は歯周病のリスクが高いとされ、チワワやパグ、ペキニーズといった犬種も歯周病になりやすいとされています。愛犬が上記の特徴に当てはまっている、または同じ犬種である場合は特に注意した方がよいでしょう。

 

参照:Epidemiology of periodontal disease in dogs in the UK primary-care veterinary setting

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jsap.13405

 

歯周病のメカニズム

上記では、歯周病になりやすい犬について解説しましたが、そもそも歯周病はどのように起こるのでしょうか?

歯周病の最大の原因は、細菌によって作られる歯垢(しこう)です。この歯垢の中に含まれる細菌が毒素を作り出すことで、歯ぐきに炎症を引き起こします。

さらに、歯垢は唾液と混ざることで歯ブラシでは落ちない歯石へと変化。この歯石は細菌の住処となることから、歯周病の原因の1つと言えるのです。

 

犬の歯周病の症状

犬の歯周病は、口の中の細菌によって引き起こされる病気だということを理解できたでしょうか?

そのうえで「じゃあ具体的にはどんな症状が見られるの?」と思った飼い主さんのために、ここでは犬の歯周病の具体的な症状について4つのステージごとに解説します。

 

ステージ1:口臭が気になる・歯ぐきが赤い・歯ぐきが腫れている・歯ぐきからの出血

ステージ2:ステージ1の症状・歯ぐきの後退

ステージ3:ステージ1の症状・中程度の歯ぐきの萎縮・歯のゆるみ

ステージ4:歯根の露出・歯が抜ける・歯の周りから膿が出る

 

上記の症状以外にも、体重が減ってしまうこともあります。これは歯周病による痛みが原因で、食事するのを嫌がるからです。

 

歯周病が悪化すると

歯周病が進行すると、鼻の奥の骨が溶けて口と鼻が貫通することも。その結果、鼻水や鼻血、くしゃみが頻繁に出るようになります。また、目の下の皮膚に穴が開いたり、あごの骨が溶けてもろくなることで骨折したりしてしまう場合もある怖い病気です。

さらに、歯周病が突然死を招く場合もあります。これまで、歯周病は歯周病菌が口の中で悪さをすることで起こる病気であると解説しました。

しかし、歯周病が悪化すると、歯周病菌が血液にのって体全体に運ばれてしまいます。すると、歯周病菌がそれぞれの臓器で悪さをして、以下のような死に直結する病気になることがあるのです。

・心臓病

・腎臓病

・肝臓病

・肺炎

・糖尿病

 

老犬でも歯周病を治療できる!

上記で、歯周病の怖い症状や歯周病によるさまざまな変化について解説しました。

それでもやっぱり「麻酔を使う歯周病の治療は怖い」と思う飼い主さんも多いことでしょう。そこでこの章では、歯周病の治療方法とその際に使用する麻酔について解説します。

 

治療方法

歯周病の治療では、プロによって口の中をきれいにしてもらうことが最も重要です。より具体的な方法としては、以下のものがあげられます。

・歯垢や歯石を除去するためのスケーリング

・歯の研磨

・抜歯(状態が悪い場合)

 

これらの歯周病の治療を行う際は、全身麻酔下での処置が主流となっています。

 

全身麻酔の必要性

最近では、無麻酔での歯石除去を専門とする店舗もあることから「無麻酔で歯石除去を行う場合もあるのに、どうして全身麻酔をしなければならないの?」と思う飼い主さんもいるかもしれません。

 

歯周病の治療に全身麻酔が必要な1番の理由は、老犬にとってよりよい治療を行うためです。麻酔によって、愛犬の痛みやじっと動かず我慢するというストレスを軽減できます。さらに、愛犬が動き回ることがないため、より安全により丁寧な治療ができるのです。

ただし、麻酔による負担が大きく、全身麻酔ができない老犬もいます。その場合は、獣医師とよく相談した上で、無麻酔による処置を検討してもよいでしょう。

 

老犬の全身麻酔での死亡リスクは?

飼い主さんが心配するように、老犬の全身麻酔がリスクを伴うのは事実です。

一方で、2002年から2004年にかけてイギリスの117の診療施設における98,036頭の犬を対象に行った研究によると、麻酔に関連する死亡率は0.17%とかなり低いという報告もあります。

 

また、老犬が健康な状態で治療を行うことや、全身麻酔をする前の血液検査やレントゲン検査をきちんと行うことは、麻酔のリスクを低下させるでしょう。

歯周病が進行して愛犬が辛い思いをするリスクと麻酔のリスクを天秤にかけて判断してみてください。

 

参照:小動物臨床における麻酔のリスク

https://vth-tottori-u.jp/wp-content/uploads/2015/03/topics.vol_.34.pdf

 

老犬の抜歯の可能性

抜歯による処置が必要となるのは、歯周病が重度である場合です。

もちろん仔犬でも抜歯による治療が必要なこともありますが、老犬のほうが歯周病の深刻度合いが高いことが多く、抜歯をせざるを得ないことが多いようです。

 

愛犬の歯周病にいち早く気づくためのチェックポイント

犬の歯周病は、見えにくい歯ぐきや見えない口の骨で起こるので、進行するまでなかなか気づかないことが多いものです。それなのに放置すれば症状は悪化し続け、さまざまな病気を引き起こしてしまいます。

そんな歯周病は、早期発見・早期治療が重要です。そこでこの章では、愛犬の歯周病にいち早く気づくためのチェックポイントについて紹介します。

 

体の変化

歯周病の症状のところでも少し解説しましたが、歯周病になると次のような変化が現われます。

・口臭が強くなる

・歯が黄色や茶色になる

・歯ぐきが腫れている

・歯ぐきから出血している

・よだれに血が混ざる

・おもちゃに血がつく

・おもちゃを片方の口でしか噛まなくなる

・ほおや目の下が腫れている 

 

行動の変化

歯周病が進行すると、行動にも次のような変化が現われます。

・頭や口を触られるのを嫌がる

・歯磨きを嫌がる

・噛むおもちゃで遊ぶのを嫌がる

・前足で口をよくぬぐう

・ご飯をよくこぼす

・以前より食事に時間がかかる

・やわらかいものしか食べない

 

 

犬の歯周病の治療費用は?

いよいよ愛犬の歯周病を治療するとなったとき、飼い主さんが気になるのはどのくらい費用がかかるのかということではないでしょうか?

そのためこの章では、治療にかかる費用について見ていきましょう。

 

治療費用はさまざま

歯石の除去や抜歯にかかる費用は、数万円から数十万円とかなりの幅があります。理由は、以下に示す項目によって金額が変わるからです。

・検査方法や種類

・麻酔の使用の有無

・犬の体重

・抜歯する本数

・歯科専門の獣医師による治療

 

思っていたよりも高額になることもあるので、獣医師とよく相談しましょう。

 

ペット保険は使える?

高額になるかもしれない歯周病の治療において、ペット保険で補償されるかどうかは気になりますよね?

結論からいうと、保険会社と契約内容によるというのが答えです。
つまり、歯周病の治療費が補償される場合もあるし補償されない場合もあるということ。

 

ただしペット保険では、『病気を治すための治療』は補償されるけれど、『病気の予防のための処置』は補償されないことが一般的です。よって、歯周病予防のための歯石除去などの費用については、補償されないものと考えておくとよいでしょう。

現在加入している人、または加入しようと思っている人は契約内容を1度確認してみてください。 

 

老犬の歯周病を予防する方法

歯周病の治療には費用がかかるし、愛犬のほおに穴が開くような辛い思いはさせたくありませんよね?

さらに、歯を清潔に保つことで愛犬の寿命を伸ばせるとしたら、しっかり歯周病を予防したいと思う飼い主さんも多いことでしょう。実際に237万頭の犬を対象に行われた調査では、年に1回の歯科スケーリングが死亡リスクを18.3%低下させるという報告もあります。

そこでこの章では、歯周病を予防する方法を効果が高い順に説明していきますね。

 

参照:Risk Factors Associated with Lifespan in Pet Dogs Evaluated in Primary Care Veterinary Hospitals

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30870610/

 

毎日歯磨きをする

歯周病を予防するには、やっぱり毎日の歯磨きが1番。ですが、ただ歯を磨けばよいということではありません。

より効果的な歯磨きのために注意してほしいのは、愛犬に合った歯ブラシを選ぶことです。例えば、私たちが普段使っている大きさの歯ブラシで小型犬の歯を磨こうと思っても、特に奥歯は歯ブラシが入りにくいのでしっかり磨けません。逆に、大型犬の歯を小さい歯ブラシで磨こうと思ったら、効率が悪く時間がかかってしまいます。

また、歯ブラシは無理でも、飼い主さんの指にはめて使う歯ブラシや歯磨きシートだったらケアをさせてくれるという老犬も多いことでしょう。このように愛犬に合った歯ブラシを選ぶことが結果として、効果を高め、歯磨きのストレス軽減につながるのです。犬用でなくても、ベビー用や老人介護用などさまざまな歯ブラシがあるので、いろいろ試してみると良いかもしれませんね。

 

デンタルケア商品を利用する

そうはいっても「うちの子は若いときから歯磨きが苦手で、今さら歯磨きの練習なんてできない」と思っている飼い主さんもいると思います。そんなときは、次のようなデンタルケア商品を使ってみましょう。

・飲み水に入れる液体マウスクリーナー

・舐めるだけで口内環境を整えるデンタルジェル

・菌を抑制するスプレー

・口内環境を整えるサプリメント

・遊ばせるだけでよいデンタルトイ

・デンタルガムやデンタルケア用のおやつ

 

これらの商品を使うと、愛犬の口に触らなくてもケアができるので、口を触らせてくれない老犬の場合に有効です。しかし、歯ブラシに比べるとどうしても歯周病を予防する効果が低くなるし、下痢をする場合もあるということを頭に入れておきましょう。

  

運動させる

これまでの予防法を見てきて「歯周病と関係がなさそうな運動で、本当に予防できるの?」と疑問に思った飼い主さんもいるかもしれません。しかし、老犬だからこそ適度な運動をさせてほしいのです。

なぜなら、上記で紹介した老犬が歯周病になりやすい理由を改善してくれるから。つまり、運動することで代謝が上がり、免疫力と唾液の分泌量がアップ。さらにのどが渇くことで水を飲めば、口内に残っていた食べ物を洗い流す効果が期待できます。

運動は、歯磨きができない、デンタルケア商品が使えない老犬であっても実践できます。老犬だから1日中寝かせておくのではなく、適度に運動させましょう。

 

まとめ:老犬の歯周病は早期の治療と予防が大切!

この記事では、犬の歯周病は口の中だけの病気ではなく、症状が悪化すれば死につながる場合もあるということを解説しました。老犬は歯周病になりやすいから特に注意が必要で、できるだけ早く愛犬の異常に気づくこと、予防のために毎日ケアを行うことが大切です。

 

そうすれば、老犬であっても歯周病に罹患していない10%になれるかもしれません。老犬が最期まで自分の歯でおいしくご飯が食べられるよう、この記事を参考に老犬のデンタルケアをしてみてください。

同じ歯の病気として「歯槽膿漏」についてはこちらの記事で解説しています↓↓

https://roken-navi.com/type_column/%e7%8a%ac%e3%81%ae%e6%ad%af%e6%a7%bd%e8%86%bf%e6%bc%8f%e3%81%a8%e3%81%af%ef%bc%9f%e7%97%87%e7%8a%b6%e3%82%84%e5%8e%9f%e5%9b%a0%e3%81%a8%e3%81%a8%e3%82%82%e3%81%ab%e6%b2%bb%e7%99%82%e6%b3%95%e3%82%82/