毎日健康な便をする老犬が、突然下痢をすれば心配になってしまいますよね?
ですが、
「少しお腹が冷えただけかな」
「下痢はよくあることだし、食欲も元気もあるから大丈夫だろう」
と1日様子を見る飼い主さんも多いでしょう。
しかし下痢の原因によっては、緊急に対応しなければならない場合もあります。また、下痢のケアのために良かれと思ってしたことが、逆に悪い影響を与えることもあるので注意が必要です。
この記事ではまず、老犬が下痢の時にしてはいけないことを解説した上で、老犬の下痢について考えられる原因と治療法、予防するための4つのポイントについて紹介します。
この記事を参考にして予防しつつ、老犬が下痢をしたらできるだけ早く動物病院を受診するようにしましょう。
老犬が下痢の時にしてはいけないこと
年をとるとともに、体の機能が衰えたり体調が変化したりする老犬は下痢を起こしやすくなります。そのため、飼い主さんが老犬の下痢のケアをする機会も増えるでしょう。
その際は、愛犬の下痢を悪化させずに早く治すためにも、以下の4つのしてはいけないことに注意してください。
・動物病院を受診しない
・通常通りの食事を与える
・自己判断で下痢止めやビオフェルミンを使う
・自己判断で絶食・絶水させる
動物病院を受診しない
下痢をしても元気な場合は、1~2日自宅で様子を見ても問題ないことがほとんどです。しかし、次のような症状が見られた場合は、放置すると危険な状態に陥る可能性があるので、すぐにでも動物病院を受診するようにしてください。
・下痢が3日以上続いている
・大量の下痢を頻繁にする
・下痢の原因が誤飲や誤食の可能性が高い
・元気がなくぐったりしている
・食欲がない
・血便、黒色便など便の色がいつもと違う
・嘔吐を伴っている
・震えている
・発熱している
・腹痛が原因で体を触ろうとすると怒る
老犬の場合は容態が急変するケースも多いので、上記の症状が見られなくても注意深く観察するようにしてください。
動物病院を受診する場合は、獣医師が下痢の原因を特定しやすくするためにも新鮮な下痢便を持っていくようにしましょう。
通常通りの食事を与える
下痢をしていても、元気で食欲もある場合はいつも通りの食事を与えても問題ないと思うかもしれません。しかし、下痢をしている時は胃や腸が敏感になっているので、通常通りの食事を与えると、状態が悪化し回復が遅れることがあります。
そのため、下痢の時は消化に良い食事を心がけましょう。私たちもお腹の調子が悪い時は消化に良いうどんやおかゆを食べませんか?老犬でも同様に、お湯でふやかした少量のフードやささみ入りのおかゆがおすすめです。
老犬にとって消化の良い食べ物についてはこちらの記事でご紹介しています↓↓
自己判断で下痢止めの薬やビオフェルミンを使う
最近では犬用の下痢止めの薬が市販されていて、インターネットなどで気軽に買えるようになっています。しかし、飼い主さんの判断で下痢止めの薬を飲ませることは絶対にやめてください。
なぜなら感染症による下痢の場合は、下痢の原因となっているウイルスや細菌を排出しようとする体の防御反応を邪魔することになるから。下痢止めの薬で下痢を止めてしまうと、ウイルスや細菌が腸内にとどまることになり、かえって良くありません。
また、愛犬が下痢をしたら、とりあえず家にあるビオフェルミンを飲ませるという飼い主さんもいるでしょう。しかし、ビオフェルミンは薬ではなくあくまでも整腸剤です。ビオフェルミンを与えたからといって絶対に下痢が治るということではなく、逆に病気の発見や治療を遅らせてしまうかもしれません。さらに、まれにですがアレルギー症状が見られることもあります。
このようなことから、下痢止めの薬やビオフェルミンを使う場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談してからにしてください。
自己判断で絶食・絶水させる
下痢の治療として一般的なのが絶食で、水を飲んで吐いてしまう場合は絶水もすすめられることがあります。しかし、これも飼い主さんの判断だけで行うことは避けましょう。
なぜなら絶食や絶水をしてはいけない場合もあるから。例えば、空腹に強いストレスを感じてしまう犬や空腹になると胃液を戻しやすい犬、持病のある犬は少量の食事を与えた方が良い場合もあります。それから、下痢と一緒に体内の水分が失われることで脱水を引き起こす可能性もあるので注意が必要です。
このようなことから、絶食・絶水させる場合は必ず獣医師の指示に従ってください。
老犬の下痢について考えられる原因と治療・対処法
下痢の原因は様々ですが、特に老犬の場合は下痢がきっかけで寝たきりになることもあるので早く治してあげたいですよね?
そこでこの章では、老犬の下痢について考えられる原因とその治療法について解説します。
消化吸収不良
老犬でよく見られるのが、消化吸収不良による下痢です。
年をとると、消化液がうまく分泌されないことで消化吸収機能が衰えます。さらに、加齢とともに腸内の善玉菌が減って悪玉菌が増えることで腸内環境が乱れ下痢しやすくなるのです。
例えば、以下のような理由で消化吸収がうまくできずに、下痢が引き起こされてしまいます。
・食べ過ぎ
・脂肪分の多い食事の摂りすぎ
・ガムなどの固いおやつの摂りすぎ
・食物繊維が多い野菜の摂りすぎ
・食事の急な変更
・食べなれないものを食べた
この時は、フードやおやつを変えるなど食事内容の見直しを行いましょう。
冷え
シニアになると、体温調節機能が衰えてきます。さらに、筋肉量も減ることで寒さや冷えを感じやすくなるのです。
この場合は、次のような対処法を試してみましょう。
・適切な室温を保つ
・腹巻を利用する
・服を着せる
・ふかふかのベッドを用意する
アレルギー
食物アレルギーによっても下痢を起こす場合があります。血液検査がアレルゲンを知る1つの手段になりますが、信頼性が高いとは言えないので参考程度にするのが良いでしょう。
食物アレルギーの治療は、食事療法としてアレルゲンを含まない食事を与えるようにします。アレルゲンを知るため、単一のタンパク質でできた食事や疑わしい食べ物がある場合はそれを取り除いた食事を与える除去食試験を行うのが一般的です。
誤食
本来食べてはいけない以下のものを誤食することで下痢を起こします。
・人用の薬
・玉ねぎやチョコレートなどの犬が食べてはいけないとされるもの
・腐った食べ物
・油分の多い人間の食べ物
・おもちゃやタオルなどの食べ物でないもの
特に、おもちゃなどを丸のみして腸に詰まると腸閉塞を起こし、最悪死に至ることもあるので、早急に外科手術で取り除く必要があります。
ストレス
大事な試験の前なんかに、緊張しすぎてお腹の調子が悪くなった経験はありませんか?
老犬も同様にストレスによって下痢をする場合があります。とはいえ何がストレスになるかは犬それぞれで、雷や花火などの大きな音の場合もあれば、環境や季節の変化の場合もあるのです。
何が老犬のストレスになっているのかを把握することは難しいかもしれませんが、できる限りストレスを取り除くようにしましょう。
ウイルス
下痢を引き起こすウイルスには、次のようなものがあります。
・犬パルボウイルス感染症
・犬ジステンパーウイルス症
・コロナウイルス感染症
これらのウイルスに対する有効な薬は今のところないので、症状を軽減し、自然治癒力を高める対症療法を行います。
細菌・寄生虫
下痢を引き起こす細菌や寄生虫には、それぞれ次のようなものがあります。
細菌
・クロストリジウム
・大腸菌
・サルモネラ菌
寄生虫
・犬回虫
・コクシジウム
・ジアルジア
・クリプトスポリジウム
・マンソン裂頭条虫
細菌や寄生虫による下痢は、それに応じた抗菌薬・駆虫薬などを投与することで治療します。病原体の中には薬に抵抗性を持つものもあり、症状が改善したように見えても再発する可能性があるので根気強く治療しましょう。
さらに、同居しているほかの犬や人間にも感染するものがあるので要注意です。生活する部屋を分けたり、便の処理をした後は良く手を洗うようにしたりするなどの対策を行ってください。
病気
老犬がかかりやすい以下のような病気の中には、下痢の症状が見られるものがあります。
・腫瘍(ガン)
・慢性腸症
・肝臓病
・腎臓病
・膵炎
・糖尿病
・子宮蓄膿症
まずは下痢の原因を特定し、食事療法や抗菌薬などそれぞれに合った治療を行います。
老犬の下痢を予防する4つのポイント
今までと同じ食事を摂っていても下痢になることがあるくらい、老犬の体調は変化しやすいもの。毎日の健康チェックとともに、以下に示す老犬の下痢を予防する4つのポイントも意識してみてください。
・老犬に合った食事を与える
・お腹の調子を整える食品やサプリメントを活用する
・散歩中は愛犬から目を離さない
・定期的に健康診断を受ける
老犬に合った食事を与える
老犬に対する適切な食事として、
「老犬はシニア用フードにするべき」
「消化が良く、老犬に必要な栄養素を摂取できるものを選ぶ」
といった感じで、ネットや本に書かれていることが多いです。しかし、愛犬に合う食事はそれぞれ違って、絶対にこれが正解というものはありません。ネットなどの情報を参考にしつつ愛犬のことを1番に考え、量・回数・食べさせるものなど試行錯誤を繰り返して、愛犬にとって最適な食事を見つけましょう。
切り方によって大きさを変えられたり、老犬の体調によって食材を変えられたりと老犬に合わせてカスタマイズできるという点で、手作り食もおすすめです。
お腹の調子を整える食品やサプリメントを活用する
お腹の調子を整えるということで最近注目されているのがプロバイオティクス。プロバイオティクスとは、摂取することで有益な効果をもたらす微生物のことで、代表的なのが乳酸菌です。
例えば、ジステンパーウイルスによる下痢が見られる犬19頭を対象に行った研究によると、プロバイオティクス(ラクトバチルス)を投与した犬では、便の量、糞便の硬さ、精神状態、食欲のすべてが改善されたことが報告されています。
腸内環境が変化しやすい老犬にとって、ヨーグルトなどの乳酸菌を含む食品やサプリメントを活用することは下痢予防に効果的です。
老犬に与えるヨーグルトの効果については、こちらの記事で解説しています↓↓
ヨーグルトは下痢の時だけでなく、便秘にも有効であり、腸内環境を総合的に改善する効果が見込めます。
散歩中は愛犬から目を離さない
道端にまかれた毒入りのフードを飼い主の知らないうちに誤食したことで、その犬が亡くなったというニュースを見たことがある人もいるでしょう。このケースはまれかもしれませんが、道端には何が落ちているか分からないので拾い食いをする犬は注意が必要です。
また、散歩中の道で、放置された下痢便にウイルスや寄生虫が残っていて、匂いを嗅いでいるときに鼻先に付いて、それを舐めることで体内に取り込んでしまう場合があります。感染する可能性もあるので、下痢便でなくても落ちている便の臭いをかがせることは避けた方が良いでしょう。
定期的に健康診断を受ける
下痢予防に限らず、老犬の健康を維持するためには定期的に健康診断を受けることが大切です。
犬は人間の4倍以上のスピードで年をとると言われていることもあって、できれば半年に1回、最低でも年に1回は健康診断を受けることをおすすめします。
まとめ:老犬が下痢をしたらすぐに動物病院へ
老犬は、加齢などが原因で下痢を起こしやすいということもあり、下痢をしても様子を見る飼い主さんが多いと思います。しかし、老犬は容体が急変しやすく、早期に治療するべき病気が原因の場合もあるので、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
また、老犬の健康を維持するためには、下痢の原因を知り予防することが大切です。この記事を参考にしつつ、少しでも不安なことや疑問に思ったことがあったなら、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
老犬ナビでは、地域ごとの動物病院を検索することができます。お住いの地域の動物病院を探すのにご活用ください。
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