ペットの犬は、人間の家族の一員として大切にされる存在です。しかし、犬も人間と同じように、年齢を重ねると健康面で悩みを抱えることがあります。
老犬になると、筋肉量が減少したり、内分泌疾患や薬物の副作用などが原因で、歩くときに踏ん張れなくなることがあります。また、散歩中に踏ん張れなくなる犬も多く、飼い主の方も犬が痛みや不調を抱えているのではないかと心配することがあります。
このような症状が見られた場合には、獣医師に相談し、適切な治療を行うことが大切です。老犬が健康的に過ごせるようにするためには、飼い主が日々のケアを行うことが必要であり、適切な対処法を知ることが大切です。
本記事では、老犬が踏ん張れない原因や散歩時の注意点、適切な対処法について解説します。
老犬が踏ん張れない原因
老犬が踏ん張れない原因には、以下のようなものがあります。
・筋力の衰えによるもの
年齢による筋肉の減少や関節の変形、運動不足による筋力の低下などが原因となる場合
・脊椎・脊髄疾患によるもの
脊椎や脊髄に異常が生じることによって、足腰の機能が低下する場合
・足関節の疾患によるもの
関節リウマチ、変形性関節症、骨折、靭帯損傷、腱炎、肉離れなどが原因となる場合
・神経疾患によるもの
神経に障害が生じることによって、足腰の機能が低下する場合
・内分泌疾患によるもの
甲状腺機能低下症、糖尿病、副腎皮質機能低下症などの内分泌疾患が原因となる場合
・薬物の副作用によるもの
投薬によって、足腰の機能が低下する場合
老犬が踏ん張れない原因は、複数の要因が絡み合っている場合が多く、正確な診断を受ける必要があります。
筋力の衰え
老犬が踏ん張れない原因は、筋力の衰えによるものです。
犬の体は年齢を重ねるにつれ、筋肉量が減少し、筋力が低下するため、普段からの活動量が減少します。そのため、老犬は踏ん張りやすさが低下し、立ち上がる、歩く、階段の上り下り、ジャンプなどの行動に苦労します。
筋肉量の減少は、老化に伴う代謝の低下や運動量の減少によるものが大きいとされています。また、老化によって筋肉細胞が死滅し、再生が困難になるため、筋肉量が低下する傾向があります。
老犬が踏ん張れない状態になった場合、適切な筋力トレーニングや適度な運動を行うことが重要です。筋力トレーニングには、ウォーキングや軽いジョギング、筋力トレーニング器具を使った筋力トレーニングなどがあります。
ただし、老犬の場合は、体力や健康状態に合わせた適度な運動を行うように注意する必要があります。
脊椎・脊髄疾患
老犬が踏ん張れない原因として考えられるのは、脊椎や脊髄に疾患がある場合があります。
脊椎や脊髄は神経を通す重要な部位であり、病気や損傷があると神経の伝達が妨げられ、犬の動きや反応に悪影響を与えます。
例えば、椎間板ヘルニアや脊髄炎などが原因で、脊椎や脊髄に炎症や圧迫が生じると、犬は踏ん張りが効かなくなる場合があります。痛みを感じたり、感覚が鈍ったりして、足が上がらなかったり、つまずいたりすることがあります。また、腰痛や四肢の麻痺、尿失禁などの症状も現れる場合があります。
このような症状が現れた場合は、獣医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。治療法には、投薬や手術、物理療法などがあります。早期に治療を行うことで、犬の症状を改善することができます。
足関節の疾患
老犬が踏ん張れない原因の一つに、足関節の疾患が挙げられます。
足関節は、指先からつま先にかけての部分であり、複数の骨や靭帯によって支えられています。足関節の疾患として最もよく見られるのは、変形性関節症です。この病気は、骨や軟骨の磨耗によって関節の形が変形し、炎症を引き起こす病気です。
また、関節炎や関節リウマチ、骨折や脱臼などの外傷によっても足関節に障害が生じ、踏ん張る力が低下してしまいます。
足関節の疾患によっては、痛みが強く、歩行が困難になることもあります。痛みを和らげるためには、獣医師から処方される痛み止めの投与や、運動量の調整が必要です。また、足関節を保護するために、足首用のサポーターなどの装具を使用することもあります。予防としては、適切な運動や食事、体重の管理などが必要です。
神経疾患
老犬が踏ん張れない原因のひとつに神経疾患があります。
神経疾患は、脳や脊髄、末梢神経に異常が起こることで、身体の機能に影響を与えます。
例えば、痛みや温度、圧力の感覚が鈍くなったり、筋肉の動きが制御できなくなったりすることがあります。このような症状は、老犬では神経細胞の老化や変性、外傷、病気などによって引き起こされることがあります。
神経疾患によって踏ん張れなくなる場合、足や尻尾の筋肉が衰えたように見えるかもしれません。しかし、神経疾患の場合は、筋肉自体には問題がなく、神経からの指令が正常に伝わらないために動けなくなっているのです。
神経疾患によって腰椎の神経が圧迫されたり、脊髄に異常がある場合は、後ろ足の筋肉や運動神経に障害が出て、踏ん張れなくなることがあります。
内分泌疾患
犬が老化に伴って発症する内分泌系の疾患が踏ん張れない原因となることがあります。
内分泌系はホルモンを分泌する器官や組織の総称であり、ホルモンの分泌量やバランスが崩れることによって、様々な症状が現れます。
老犬が踏ん張れない原因としては、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能低下症などがあります。甲状腺機能低下症では、甲状腺がうまく機能せず、代謝が低下して全身のエネルギー不足になります。副腎皮質機能低下症では、副腎皮質ホルモンが不足し、免疫力やストレス対応能力が低下します。
これらの疾患によって、犬は体力や活力が低下し、散歩や運動が億劫になり、踏ん張ることができなくなります。また、食欲不振や体重減少などの症状も現れる場合があります。
薬物の副作用
犬が服用している薬物が原因で、体力や活力が低下し、散歩や運動が億劫になり、踏ん張ることができなくなることがあります。
老犬は病気や持病を抱えていることが多く、それに対する治療のために薬物が使用されることがあります。しかし、その薬物には副作用があり、高齢化による代謝能力の低下や、他の薬物との相互作用によって副作用が顕著に現れることがあります。
代表的な薬物としては、抗生物質や痛み止めなどが挙げられます。
抗生物質は感染症治療に使用されますが、腸内細菌叢を破壊し、食欲不振や下痢などの副作用が出ることがあります。痛み止めは、痛みを軽減するために使用されますが、肝臓や腎臓への負担が大きく、副作用として食欲不振や嘔吐、脱力感が現れることがあります。
また、薬物の種類や量、使用期間などによっても副作用の発現が異なります。そのため、獣医師の指示に従い、適切な投薬方法を守ることが大切です。また、薬物の副作用を軽減するためには、食事や運動などの生活習慣の見直しや、サプリメントなどの併用が考えられます。
老犬が踏ん張れないことで困る場面
トイレ時に後ろ足に力が入らない
老犬が踏ん張れない場面の一つに、トイレ時が挙げられます。トイレは、老犬にとって非常に重要な行動であり、排泄ができなくなると健康に影響が出ることもあります。踏ん張ることができない老犬は、トイレに行くことが難しくなります。
トイレ時に踏ん張れない原因としては、骨格や筋肉の老化による衰えが考えられます。足の筋肉や骨格が弱くなると、踏ん張る力が弱まってしまいます。また、足関節や脊椎・脊髄に疾患がある場合も、踏ん張れなくなってしまうことがあります。
体が思うように動かなくなってきても、環境を整えてあげると上手にトイレができるようになることもあります。
介護は「できないことをサポートする」のが基本です。何から何まですべてやってしまうのはいけません。なぜなら、何もできなくなってしまうからです。手助けすることで、できるようにしてあげてください。
散歩時に歩けなくなってしまう
犬が散歩中に、歩くのが億劫になり、踏ん張ることができなくなることがあります。これは、高齢化に伴う筋力や体力の低下によるものが多く、散歩の際に飼い主が抱える悩みの一つです。
高齢化による筋力や体力の低下に加え、関節炎や膝の病気など、痛みや不快感を引き起こす疾患がある場合にも、散歩時に踏ん張れなくなることがあります。また、犬種によっても歩き方や歩きやすさに違いがあり、小型犬は体力が限られているため、散歩中に疲れてしまうことも考えられます。
散歩中に犬が踏ん張れなくなった場合は、犬を無理に引っ張ったりせず、ゆっくり休憩を挟むことが大切です。また、短い距離から徐々に散歩の距離を伸ばしたり、獣医師に相談して犬の疾患に対する治療を行うことも重要です。さらに、犬の年齢や状態に応じた適切な食事や運動を行うことで、散歩時の疲れを軽減することもできます。
老犬が踏ん張れない対処法
老犬が踏ん張れないとき、場面に応じて適切な対処を行うことが重要です。
軽い散歩で筋力アップ
「老いは足から」といいますが、犬も人間同様足から弱ってきます。
年齢とともに足腰の筋力が衰えてきたら、そのままにしておくとあっという間に寝たきりになってしまうので注意が必要です。
自力で起き上がったり歩いたりすることがままならなくなってきたと思ったら、筋力が低下してきたサインです。できるだけ早めにケアしてあげることが大切です。
散歩をさせる
ヨロヨロして足が弱ってくると、散歩を嫌がるようになるかもしれませんが、できるだけ連れ出してあげるようにしましょう。
加齢による筋力低下が起きているので、散歩はいい運動になります。さらに飼い主さんとの大切なコミュニケーション時間にもなるので、様子を見ながら短時間でもいいので散歩を取り入れるようにしましょう。
ペットカートや補助ハーネスを付けて散歩するだけでも、違います。外の空気を吸い、リフレッシュさせてあげましょう。
散歩の前後に準備運動を習慣づける
散歩の前にマッサージをしたり、軽く足の曲げ伸ばしを行いましょう。大きな足の筋肉をほぐして血流をよくすることで、筋肉や関節の可動域が広がり、転倒やケガの防止につながります。
散歩後はクールダウンが目的となります。散歩前と同じく、軽く足の曲げ伸ばしや全身をマッサージをして、使った筋肉の緊張をほぐします。ゆっくり優しく行うことで、疲れが残りにくくなります。
雨の日は室内トレーニング
雨の日でお散歩に行けないときは、室内でトレーニングをしましょう。
小型犬なら座布団やクッションの上をゆっくり歩かせるだけでも、運動になります。大型犬なら、ゆっくり立つ、ゆっくり座るだけでスクワット運動になります。
老犬に心地いい部屋づくり
筋力が衰えてくると段差の上り下りが難しくなり、足を滑らせたり、転んだりしてケガをしてしまうこともあります。足が弱くなってきたと思ったら早めに老犬のための心地いい部屋づくりをおすすめします。
・段差がないところにベッドを移す
・フローリングは滑らないようにマットを敷く
・周囲にものを置かないようにする
・ぶつかっても危険がないよう柔らかいものでカバーをする
老犬が歩き回る場所に危険なものはないかをまず、チェックします。
部屋作りの注意点1:階段
階段は老犬にとって危険ゾーンです。若い頃は何も問題なく上り下りができたとしても、年を取ると踏み外したり、落ちてしまったりします。滑りにくいマットを敷いたり、危ない場合は柵を付けてもいいでしょう。
部屋作りの注意点2:段差
段差は老犬の足腰に負担がかかります。イス・ソファ・ベッドなど、床との段差がある場合は要注意です。年を取ると着地に失敗することも多くなり、骨折することもあります。なぜ、そこに乗りたがるかを考えてあげてから対処してあげましょう。
たとえば飼い主さんがソファに座っているから、横に行きたくなるだけかもしれません。その場合は、ソファでなく飼い主さんが床に座ってあげればいいだけです。ベッドの横に階段を設けるなどすれば、足腰の負担も軽くなります。
トイレ環境の改善:場所を広げる
トイレが狭いとふらついてはみだしてしまう恐れがあるので、なるべくトイレシートを広げて、トイレの場所を広げてあげましょう。大判の洗えるトイレシートや赤ちゃん用のおねしょシーツなどを使うとラクです。
また、滑りやすいフローリングの上にトイレシートを置くとどうしても滑ってしまいます。滑り止めマットを敷くなどの対策を取り、滑りにくい環境を整えてあげましょう。
何度も失敗すれば飼い主さんもイラッとするでしょうが、相手は老犬です。犬の方もわざとしているわけではありません。体が思うように動かないだけですから、なるべく叱らないようにしてください。
食事環境の見直し
筋力が衰えてくると食事の体制を維持することが難しくなり、食欲低下につながりかねません。年を取ってくると頭を床まで下げるのが大変になるので、台を用意して、食器をワンちゃんの口元の高さまで上げるようにしましょう。こうすれば、ご飯も食べやすくなり、食事の姿勢もラクになります。
立てない場合は、フセをした状態で、口元に水やご飯を置いて自力で食べさせます。体を横にしたり、寝たままの状態で食べさせると詰まる原因になります。
また、硬いフードは食べづらいため、ぬるま湯、水、だし汁を加えて柔らかくふやかしてあげると食べやすくなります。水分を追加することで老犬に不足しがちな水分の補給もできます。ドライフードが食べにくそうなら、ウェットタイプに切り替えるのもおすすめです。
あまりごはんを食べなくなった老犬には、犬用のピューレがおすすめです。
効率的にカロリーが摂取できるため、食が細くなった犬の健康維持の心強い味方です。
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シニア犬用のウェットフードについてはこちらの記事をご参照ください。
歩行を補助するサポーターやハーネス
自立して歩行することが困難な老犬には、サポーターやハーネスの活用が有効です。
犬種や犬の筋力の衰え方によって、選ぶべきアイテムは変わってきます。例えば、身体を支えて足への負担を軽減するハーネスにも、前足用と後ろ足用のものがありますので、どちらの足の筋力が弱っているのか、力が入らないのかを確かめる必要があります。
椎間板ヘルニアなどで足が麻痺してしまっている場合には、車椅子で補助することを検討しましょう。
薬物治療や手術
老犬がすでに痛みで苦しんでいたり、不快感を引き起こす疾患がある場合には、いち早く獣医師に相談し、適切な治療を行いましょう。
薬物を利用する際は、副作用によって症状が悪化して見えたり、違う症状が発症する場合があるため、副作用の可能性をしっかり理解したうえで活用しましょう。
まとめ:老犬の踏ん張れない状態を適切にケアしよう
老犬が踏ん張れない原因には、筋力の低下や内分泌疾患、薬物の副作用などがあります。
また、散歩時に犬が踏ん張れなくなる場合は、足腰や関節の痛み、呼吸器疾患などが考えられます。
老犬が踏ん張れなくなると、運動不足やストレスなどが原因で健康状態が悪化することがあります。適切な対処法としては、獣医師に相談して適切な栄養バランスやサプリメントを与えること、軽い運動やストレッチを行うこと、散歩中に疲れたら休憩を取ることなどが挙げられます。また、犬の状態に合わせて、薬物治療や手術などの治療も必要となる場合があります。
老犬が健康的に過ごすためには、獣医師との定期的な健康管理が大切であり、適切なケアを行うことが必要です。
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