老犬の夜泣きに心身ともに疲れて、たくさん悩んで睡眠薬を処方してもらった飼い主さんであっても、いざ薬を飲ませるとなると
「この睡眠薬は本当に安全なのだろうか?」
「副作用は辛くないだろうか?」
と不安に思い薬を与えられない飼い主さんもいるでしょう。
この記事は睡眠薬の使用をすすめるものではありませんが、夜泣きのせいで愛犬も飼い主さんも体力を消耗してしまっているのであれば、睡眠薬の使用を検討してみるのも良いと思います。睡眠薬の正しい知識を身につけて正しく利用すれば、老犬の夜泣きというストレスから解放されるかもしれません。
この記事では、老犬の夜泣き対策として使用される睡眠薬の安全性、薬の種類と副作用を紹介した上で、薬を使用しない選択をした場合の夜泣きの対処法についても解説しています。
これらを参考にして、老犬と飼い主さんのどちらも夜にぐっすり寝られるようにしましょう。
夜泣きの原因と対策についてはこちらの記事を参照ください↓↓
https://roken-navi.com/type_column/%e8%80%81%e7%8a%ac%e3%81%ae%e5%a4%9c%e6%b3%a3%e3%81%8d%ef%bc%88%e5%a4%9c%e9%b3%b4%e3%81%8d%ef%bc%89%e3%81%ae%e5%8e%9f%e5%9b%a0%e3%81%af%ef%bc%9f%e9%a3%bc%e3%81%84%e4%b8%bb%e3%81%8c%e3%81%99%e3%81%b9/
目次
老犬に対する睡眠薬の安全性
“老犬に対して睡眠薬を使用することは本当に問題ないのか”
これは、年をとり体の弱った老犬の飼い主さんが1番気にすることだと思います。
ズバリ結論からお伝えすると、安全に問題なく使用できる犬もいれば、そうでない犬もいるというのが答えです。
なぜなら、睡眠薬が安全に使用できるかどうかは次のような理由で変化するから。
・薬を服用する量
・薬への感受性(薬が効きやすい体質かどうか)
・年齢
・犬種
・体の大きさ
・持病やアレルギー
・現在服用している薬やサプリメント
など
このように、動物病院で処方されるからと言ってどの犬でも安全とは言い切れない睡眠薬ですが、飼い主さんが正しい知識を身につけることで、安全性を高めることは可能です。
例えば、人用の睡眠薬を犬が誤飲することで中毒症状を引き起こしたケースが多数報告されています。このことを知っていれば人用の睡眠薬を愛犬に使用するのは間違いで、睡眠薬を使いたい場合は獣医師に処方してもらった薬を決められた量与えることが、その時点で1番安全に使用できる方法だということが分かるでしょう。
そこで次の章では、より詳しく正しい睡眠薬の知識を解説していきます。
老犬の夜泣き対策として使用される睡眠薬の種類と副作用
老犬の夜泣き対策として処方される薬には、睡眠導入剤や精神安定剤、鎮静薬などがあります。その中でも、動物病院で処方されることの多い以下の4つの睡眠薬がどのような薬なのか、副作用や使用を注意するべき犬も含めて見ていきましょう。
・アセプロマジン
・ジアゼパム
・トラゾドン
・メラトニン
アセプロマジン
フェノチアジン系薬のアセプロマジンは、ドーパミン受容体に作用して精神安定作用・鎮静作用を発揮し、麻酔の前に投与する薬としても使われています。
比較的安全性が高い薬剤と言われていますが、次のような副作用があることも忘れてはいけません。
・低体温
・低血圧
・てんかん発作の閾値を下げる
・瞬膜の脱出
・長時間の鎮静
・ヘマトクリット値(血液中に占める赤血球の割合)の低下
・行動力の低下
また、上記の副作用も関係して以下のような場合はアセプロマジンの使用に注意する必要があります。
・てんかんの持病がある犬
・循環器の疾患がある犬
・糖尿病の犬
・アセプロマジンに敏感であると言われている大型犬、グレイハウンド、ボクサー、その他の短頭犬
・コリー、オーストラリアン・シェパード、シェルティなどのMDR1遺伝子を欠損している犬
・妊娠中および授乳中の犬
ジアゼパム
ベンゾジアゼピン系薬のジアゼパムは、脳のGABA受容体に作用し、脳全体の活性を落とすことで催眠作用を発揮し、抗てんかん薬としても使われている薬です。
中枢抑制作用や呼吸抑制作用などがほとんどないため、比較的安全に使用できる薬ですが次のような副作用も見られます。
・ふらつき
・活動力の低下
・食欲増進
また、ジアゼパムは耐性ができやすく長期の利用はできません。
トラゾドン
セロトニン遮断再取り込み阻害薬のトラゾドンは、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンを脳内に増加させることで抗不安効果・鎮静・催眠作用が期待でき、不安症の治療にも使われる薬です。
副作用はほとんどありませんが、一部のペットでは以下のような副作用が見られます。
・嘔吐
・下痢
・運動失調
・不整脈
・攻撃性
また、次の犬にはトラゾドンを投与してはいけません。
・MAO(モノオキシダーゼ)阻害剤や利尿剤などを服用している犬
・肝臓や腎臓、心臓に障害のある犬
・閉塞隅角緑内障の犬
・妊娠中の犬
さらに、トラゾドンを与え過ぎたり、他のセロトニン増強薬と組み合わせたりすると、セロトニン症候群になる可能性があるので要注意です。セロトニン症候群になると、痙攣や瞳孔の拡張、呼吸困難などの症状が見られ、死に至ることもあります。
メラトニン
メラトニンは、覚醒と睡眠を切り替えることで体内時計を調節する役割があり、睡眠ホルモンとも呼ばれています。
メラトニンは犬の脳内でも自然に作られているホルモンなので安全性が高く、服用による副作用はほとんどありません。しかし、消化器系の不調や、心拍数の上昇を引き起こすこともあります。
また、メス犬の生殖サイクルに影響を与えたり、糖尿病の犬ではインスリン抵抗性を引き起こしたりする可能性があるので注意が必要です。さらに、メラトニンのサプリメントには、犬が中毒を起こすキシリトールを含むものもあるため、成分表をよく見るようにしましょう。
参照:「Melatonin for Dogs: Is It Safe?」
犬の睡眠薬の上手な使い方
上記では、動物病院から処方される主な睡眠薬について見てきましたが、服用する量やほかの薬との飲み合わせなど注意するべき点がたくさんありました。そのため、使用する際には獣医師との相談が必須だということがわかったかと思います。
ですが、獣医師から言われた量より少ない量から薬を服用させる分にはそれほど問題はありません。少ない量でも薬が効きやすい犬もいるので、何回か試して愛犬と飼い主さんの負担にならない量を把握することが大切です。
また、薬が効き始める時間や薬の効果が持続する時間は犬それぞれで、長期間の服用によっても変化することがあります。なので、これも試行錯誤を繰り返して、愛犬と飼い主さんの生活リズムに合うように、服用させるタイミングを見極めていくと良いでしょう。
同じ量を服用させたとしても、毎回同じような効果で同じ時間効き目があるとは限らない睡眠薬ですが、獣医師とよく相談しつつ、効果的に使いたいものですね。
犬の睡眠薬を使う際の飼い主としてのポイント
基本的に動物病院の獣医師に言われたとおりに服用できれば問題ありません。
しかし、犬や住環境によっては、想定通りに睡眠薬を服用できないような場合や使い方について判断に迷う場合もあると思います。ここでは、そういったときの一つの判断基準となるようなポイントについて挙げていきます。
あくまで一般事例なので、実際には個別の犬の状態に合わせて、飼い犬のことを一番よく知っている飼い主が判断することが重要です。
睡眠薬の投与後の副作用や相互作用を把握しておく
上記で説明した通り、各睡眠薬には潜在的な副作用の可能性があります。また、複数の薬を組み合わせて使用する場合には相互作用が生じる場合があります。
これらの作用が出ることは仕方ないことなのですが、飼い主としてはそのことを事前に知り、慌てずに対処できることが重要です。
特に、副作用を勘違いして、別の薬を新たに与えてしまうと非常に危険です。
効果が弱い睡眠薬から試す
初めて愛犬に睡眠薬を与える場合は、比較的効果の弱いものから試しましょう。
薬の効果や副作用の大きさには個体差があるため、弱いものを試してその効果次第で強い薬を試す方が安全です。
薬の使い始めは獣医師の指導のもとで行うことを推奨するため、自己判断で初めて薬を与えることはあまりないと思いますが、薬や副作用の強さを把握することの重要性も頭に入れておきましょう。
睡眠薬を使わない老犬の夜泣き対策
これまで老犬の夜泣き対策として使われる睡眠薬について見てきましたが、そうはいってもやはり薬は使いたくないと思う飼い主さんもいるでしょう。
そこでこの章では、薬を使わないで老犬の夜泣きに対処する方法をいくつか紹介します。
昼間はなるべく起きてもらう
老犬になると寝ている時間が長くなり、昼間でもぐっすり眠っていることが多いですよね?しかし、昼寝が長くなると昼と夜が逆転してしまうことで夜泣きにつながります。皆さんも昼寝をし過ぎたときは、夜なかなか眠れないことがあるでしょう。
夜泣きによって昼夜が逆転することは、生活リズムが崩れるだけでなく、体力も消耗してしまうのでどちらにとっても良いことがありません。老犬にとっても飼い主さんにとっても、同じ時間に起きて同じ時間に寝るのが1番ベストです。
そのため、愛犬が昼間気持ちよさそうに寝ていたとしても、少しの時間でも起こして運動をさせたり、コミュニケーションをとったりするようにしましょう。
日光浴
日光に当たるとセロトニンが分泌されるとともにメラトニンの分泌が止まり、体内時計がリセットされて活動状態になります。メラトニンは目覚めてから14〜16時間ぐらい経過すると再び分泌が高まり、その作用で血圧・心拍数・体温が低下して、休息に適した状態に導かれ眠気を感じるようになるのです。
メラトニンはセロトニンから作られるので、セロトニンが少ないと必然的にメラトニンも少なくなり、メラトニンの効果を十分に得られません。そのため、寝てほしい時間の14〜16時間くらい前(午前中)に日光浴をさせてセロトニンの分泌を促すことで、メラトニンも十分に分泌され夜に眠りやすくなるでしょう。
サプリメント
老犬の夜泣きを防止するためのサプリはありません。しかし、認知症を予防・改善する効果が期待されるメイベットDCなどのDHA(ドコサ・ヘキサエン酸)やEPA(エイコサ・ペンタエン酸)を含むサプリを服用することで夜泣きの症状が改善するケースがあるようです。
認知症予防のためのサプリメントは、ネットで購入することはできますが飼い主さん自身の判断で愛犬に与えることは避けてください。もし、試してみたい場合は獣医師に相談した上で病院で処方してもらいましょう。
漢方
結果として現れている症状を治す西洋医学の薬とは違って、東洋医学の漢方は体全体の調子を整えることで症状を改善しようとするものです。そのため即効性は劣るものの、化学的に合成された薬と比べると自然の薬草や鉱物などでできた漢方は、体に優しく副作用が少ないと言われています。
だからといって、飼い主さんの自己判断で服用させても良いというわけではありません。サプリメントと同様に動物病院で処方してもらいましょう。もし、かかりつけの病院で取り扱っていない場合は、オンラインで対応してくれる病院を活用するという手もあります。
認知症や夜泣きの改善薬として、一般的に処方されるのは抑肝散です。これは、近年人において認知症やアルツハイマー病に効果があることが報告されています。
フラワーレメディ
フラワーレメディとは、自然の植物や水がもつエネルギーによってネガティブな状態を改善し、心のバランスを取り戻す療法です。自然のものを使っているので、安全で副作用もないと言われています。
老犬の夜泣きに有効とされるのは、リカバリーレメディと呼ばれるもの。これは、主に強いストレスや緊張を感じたときに飲むと効果的とされており、老犬の夜泣きにも有効だそうです。メーカーによっては、レスキューレメディやファイブフラワーレメディとも呼ばれています。
人にも使えるので、愛犬への使用が心配なら、まずは自分で試してみると良いかもしれませんね。
アロマオイルでマッサージ
猫やそのほかの小動物においては有害だと報告されているアロマオイル。嗅覚が優れた犬への使用も賛否が分かれるところですが、リラックス作用のある香りを使うことで、その効果を体感しているという飼い主さんがたくさんいるのも事実です。
そんなアロマオイルでマッサージをする場合は、次のような注意点があります。
・精油は合成されていない100%天然のものを選ぶ
・犬が嫌がる香りを使わない
・マッサージオイルの精油濃度は0.1%以下にする
・皮膚に問題がないか最初にパッチテストを行う
・アレルギー反応が出ていないか確認する
・マスタードなどの犬に使ってはいけないアロマを使用しない(ほかにも多数ある)
・アロマオイルを誤飲させない
・長時間、長期間の使用は控える
・空腹時または食後1時間はマッサージをしない
夜泣きする老犬と離れるという選択も
老犬の夜泣きで心身ともに疲れてしまった飼い主さんであっても、薬で無理やり眠らせることに負い目を感じる人もいるかもしれません。また、薬やそのほかの方法もすべて試したけれど、どれも良い結果が得られなかった飼い主さんもいるでしょう。
そんな時は、老犬ホームやペットホテルに預けたり、ペットシッターに手伝ってもらったりして、飼い主さんの元気を回復することも大切です。そうして飼い主さん以外の人と関わったり、家以外の場所に行ったりすることで多くの刺激を得られるので、愛犬にとってもプラスになると考えられます。
愛犬と飼い主さんの両方がストレスなく生活するために、上手にプロの力を借りましょう。
まとめ:老犬の夜泣き対策として睡眠薬は有効な場合もあるが、獣医師との相談が必須!
正しい用法・用量を守って睡眠薬を与えることで、副作用なく老犬の夜泣きを改善できる場合もあります。しかし、量や薬の飲み合わせなどいくつか注意する点があったり、睡眠薬を避けた方が良い場合もあったりと、かかりつけの獣医師との相談が必須であることが分かったことでしょう。
また、睡眠薬を使わない対処法もいくつか紹介したので、まだ試していない方法があればぜひ実践してみてください。そして、もうすべてやってみたが夜泣きを改善できず、飼い主さんの心身が消耗してしまっている場合は、飼い主さんだけでなく愛犬のためにもプロの力を借りることも検討してみましょう。
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