激しい運動をしたわけではないのに、愛犬が「ハァハァ」と息をしていると心配になりますよね?
「暑いのかな」
「年をとって疲れやすくなったのかな」などと考える飼い主さんも多いことでしょう。しかし、老犬の息が荒くなる原因は、暑さや加齢だけではありません。
この記事では、老犬の異常な呼吸に気づくポイントを紹介した上で、老犬の息が荒いときに飼い主が取るべき対応から、老犬の息が荒くなる原因や病気、その対策についても解説していきます。これらを知識として持ち、もしもの時すぐに愛犬を助けられるようにしましょう。
目次
犬の正常時の呼吸の把握
老犬の異常な呼吸は、心身の不調のサインです。特に“息が荒い”ことをはじめとする呼吸困難は生命の危機に直結するため、飼い主がいち早くそのサインに気づくことが重要です。
しかし、正常時の呼吸を知らなければ、異常時を検知することはできません。
ここでは、正常時の犬の呼吸や一般的な範囲内の犬の息の荒さについて解説していきます。
愛犬の呼吸数の計測
あなたは愛犬の呼吸数を知っていますか?
犬の正常な呼吸数は、1分間に10回~35回程度と言われています。しかし、パグやブルドッグなどの短頭種は呼吸数が比較的多く、大型犬は小型犬より呼吸数が少ないというように犬によって様々です。
つまり大切なのは、一般的な数値と比較することではなく、普段の元気な愛犬の呼吸と比べること。中でも呼吸数の比較は、誰でも簡単にできる方法なのでおすすめです。
呼吸数を測定するには、次のような方法があります。
・上下する胸の動きを目で見て数える
・愛犬の体に手をあてて胸が上下する回数を数える
・寝ている時など愛犬の鼻の前に鏡をかざし、その鏡が曇る回数を数える
呼吸数のカウントは愛犬がリラックスしている状態のときに行い、”吸うと吐く”のセットを1回として数えるようにしましょう。1分間の観察が難しければ、10秒間カウントしたものを6倍、20秒間カウントしたものを3倍というようにして計算したものを1分間の呼吸数とします。
高齢犬で、はあはあ(ハァハァ)しているのは?
高齢犬が息を荒く「はあはあ」としている現象は、一部の状況下で自然なことがあります。
高齢になると、犬の身体機能は低下し、例えば暑さに対する耐性が減少するため、より頻繁に息をすることがあります。人間でも同じことが言えるでしょう。年をとるにつれて疲れやすくなってしまうのはある程度自然なことと言えます。
しかし、このような呼吸は、心臓疾患や呼吸器疾患などの健康問題の兆候である可能性もあります。特に、持続的かつ異常な呼吸は、獣医師による診察が必要な場合があります。したがって、「はあはあ」する行動が自然なものかどうかは、犬の全体的な健康状態やその他の症状を考慮する必要があります。
注意がすべき犬の息の荒い状態
犬が興奮したときや運動したあと、または高齢の場合や暑いときに呼吸が早くなるのは、生理現象なので問題ありません。
しかし、それ以外の状態で息が荒くなっていたら、注意が必要です。
以下に注意すべき具体的な状態の一例を挙げます。
・興奮や運動をしてのに呼吸が荒い
・気温が暑くないのにハァハァしている
・お座りの状態で上を向いて呼吸している
・長時間苦しそうな呼吸をしている
・腹式呼吸をしている
・「ガーガー」「ヒューヒュー」など呼吸音が異常
・舌の色が紫色になっている
これらの症状が見られた場合、愛犬を救うためには迅速な対応が必須となります。まずは動物病院の獣医師に相談して専門的なアドバイスに従うことがおすすめです。
逆くしゃみ症候群
ちなみに、愛犬が突然ブーブーと鼻を鳴らしながら呼吸する様子を見たことがありませんか?
これは「逆くしゃみ症候群」と呼ばれる症状で、初めて見た人は激しいので驚いてしまうことでしょう。たいていはすぐに治まるので心配いりませんが、長時間続いたり頻度が高かったりする場合は注意が必要です。逆くしゃみを早く止めるには、背中や胸を優しくなでる・鼻に息を吹きかける・鼻の穴をふさいで口で呼吸させるといった方法があるので愛犬に合った方法を試してみてください。
老犬の息が荒いと感じたときに飼い主がやるべきこと
老犬が苦しそうに呼吸をしていたら、まずは応急手当をしましょう。特に老犬は状態が急変する場合があるので、状態の悪化を防止し苦痛を少しでも軽減させることが重要です。
その後は、なるべく早く動物病院に連れていくようにしましょう。知識がなければ様子見でも大丈夫なのか、すぐに治療が必要なのかを判断するのは難しいものです。
つまり、老犬の息が荒いと感じたときに飼い主がやるべきことは以下の3つになります。
・楽な姿勢にさせる
・適切な温度を保つ
・動物病院を受診する
楽な姿勢にさせる
横向きで寝た状態が楽な姿勢だと考える人もいるかもしれませんが、犬は基本的にうつ伏せが楽な姿勢だと言われています。その理由は、うつ伏せが肺を圧迫しない姿勢だからです。
そのため呼吸が荒い犬を無理に横向きに寝させたり、仰向けに抱っこしたりしないようにしましょう。しかし、楽な姿勢にさせるのは呼吸の悪化を防ぐためなので、絶対にうつ伏せでなければならないというわけではありません。
あくまでも、愛犬の様子を見ながら1番楽な姿勢をとれるように心がけてください。
適切な温度を保つ
老犬になると、温度の変化に対応する能力が衰えてきます。そのため、なるべく温度を一定にして老犬の負担を減らすようにしましょう。
老犬にとっての適温は25度前後と言われていますが、愛犬の様子を見ながら調節するのがベストです。特に熱中症の疑いがある場合には、エアコンなどを利用し涼しい環境を保つようにしましょう。
動物病院を受診する
上記で説明した2つの応急手当によって状態が改善した場合でも、獣医師の診察を受けるようにしてください。また、動物病院に行く前に先に連絡をしておくと、スムーズに診察してもらいやすくなります。
そして、より正確な診断をしてもらうために飼い主ができることは以下の2つです。
・動画撮影
・服用中の薬を持参
愛犬の様子を事細かに言葉だけで伝えるのには限界があります。その点、動画の場合はリアルな様子・音・色などを獣医師に伝えられるので非常に有効です。
また、かかりつけの動物病院でない場合は特に、服用している薬を持参するとよいでしょう。
愛犬の情報をよりたくさんより正確に獣医師に伝えることが、正確な診断につながります。緊急の場合でも冷静にやるべきことができるように、日ごろからイメージトレーニングをしておくといいかもしれませんね。
老犬の異常な呼吸について考えられる原因と対策
上記では、老犬の異常な呼吸に気づくポイントと飼い主がやるべきことについて解説しました。ですが、できれば愛犬が苦しそうにするところは見たくないですよね?
よってこの章では、愛犬の異常な呼吸の原因と対策について理解するため、考えられる以下の3つの原因について見ていきましょう。
・加齢
・暑さ(熱中症)
・ストレス
加齢
老犬になると、筋力や呼吸器の機能が低下することで、短いお散歩でも「ハァハァ」と呼吸が荒くなることがあると思います。これは、年を取るのとともに体力が落ちたことによるもので特に問題はありません。
この対策は、老犬になっても無理のない範囲での運動を続けることです。「年を取ったからあまり運動させない方がよい」とは思わずに、適度な散歩や筋トレで元気な老犬でいてもらいましょう。
暑さ(熱中症)
私たち人間は、皮膚にある汗腺から汗をかき、それが蒸発することで体温を調節しています。一方、犬の汗腺は足の裏などの一部にしかないので、汗による体温調節ができません。
その代わりに、口を開けて「ハアハア」と呼吸することで口の中の水分を気化させ、体温を調節しているのです。このため、暑さによって体温が上がると熱を放出するために呼吸が早くなります。
このように暑さに弱い動物である犬にとって気をつけたいのが熱中症。これは、下痢や嘔吐、呼吸困難など様々な不調を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。
熱中症に特に注意したい犬種や特徴は、フレンチブルドッグなどの短頭種やシベリアン・ハスキーなどの北国原産の犬種、毛の色が黒色または黒色に近い色の犬や太っている犬です。
また、老犬になると体温調節機能が衰えるので、夏場の熱中症には特に注意が必要。体温が上がりすぎるのを防ぐ方法として次のような対策があります。
・エアコンを活用する
・いつでも十分な量の水を飲めるようにしておく
・時間をずらして涼しいときに散歩に行く
・猛暑の中車内に放置しない
・接触冷感マットやアルミ板などを活用する
ストレス
ソワソワしながら、または体をブルブル振りながら荒い呼吸をしている時はストレスを感じていると言えるでしょう。そんな犬のストレスとしては、次のようなものが考えられます。
・環境の変化(家族構成の変化・家具の配置替えなど)
・大きい音(工事・花火・雷など)
・車酔い
知らない人が苦手な犬にとって、飼い主に新しいパートナーができる、赤ちゃんが生まれるといった家族構成の変化は相当なストレスになるでしょう。しかし、環境の変化は避けられないものもありますよね?このストレスを少しでも軽減させるには、十分な運動やスキンシップの時間を確保すること、安心できる生活空間を作ることが有効です。
次に、雷や花火などが苦手な犬は、大きい音が怖いのでブルブル震えながら荒い呼吸をする場合があります。この対策は、外飼いであれば部屋の中に入れる、室内であれば窓を閉めて愛犬が安心できるスペースを確保するなどです。また、犬の不安を緩和するために“サンダーシャツ”の利用を検討するのもいいでしょう。
車酔いでは、車の揺れや匂いが原因でよだれをたらしながら荒い呼吸をする場合があります。この対策としては、次のようなものがあげられます。
・車内の温度を下げる
・換気する
・空腹・満腹の状態を避ける
・こまめに休憩をとる
・安全運転で揺れないようにする
・犬用の酔い止め薬を飲ませる
上記に示したものは例にすぎません。愛犬がストレスを感じるものはそれぞれで、1つとは限りません。愛犬のストレスになっているものは何かを知り、そのストレスをできるだけ排除するようにしましょう。
老犬の息が荒い症状から考えられる病気とその予防策
老犬の異常な呼吸の原因として、上記の3つ以外に忘れてはいけないのが呼吸器系の疾患によるものです。この章では、犬の息が荒い症状から考えられるいくつかの病気とその予防策についてまとめます。
のどの疾患:軟口蓋過長症
短頭種気道症候群とは、パグやフレンチブルドッグなどの“鼻ぺちゃ”と呼ばれる短頭種に多く見られる病気の総称です。これは、気道の形や構造が通常と違うことで引き起こされます。
その1つである軟口蓋過長症は、軟口蓋(上あごの奥にある柔らかい部分)が通常よりも長くなることで気道をふさぎ、呼吸に障害が起こる病気です。これは、生まれつきのものなので明確な予防策はありません。
しかし、太り過ぎないように体重を管理したり、体温上昇を防ぐために気温が高い時間の散歩を避けたりといった工夫をすることで症状の悪化を防ぐことができます。
肺の疾患:肺炎
肺炎は、ウイルスや細菌の感染・フィラリアなどの寄生虫・誤嚥などによって肺に炎症が起こる病気です。特に老犬は、食べものを飲み込む力が弱くなるので誤嚥性肺炎にかかりやすくなります。
誤嚥性肺炎を予防するため、寝たきりの老犬であっても食べ物が気管に入らないよう上体を起こして食べさせるようにしましょう。また、飲み込みやすいようにフードをふやかしたり、流動食にしたりすることも有効です。
気管の疾患:気管支炎
気管支炎は、ウイルスや細菌の感染・花粉などのアレルギー・誤飲・フィラリアなどの寄生虫刺激の強い気体などによって気管支に炎症が起こる病気です。
ウイルスや細菌感染の予防として、生活環境を清潔に保つようにしましょう。また、タバコの副流煙は人間と同様に犬の健康にも悪影響を及ぼすことが分かっています。愛犬だけでなく、飼い主自身の健康のために禁煙を頑張ることも予防につながるのです。
心臓の疾患:僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症は犬に最も多い心臓病。これは、心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁がしっかり閉じないことで、心臓の中で血液が逆流してしまい、全身に送り出す血液が少なくなる病気です。
特に高齢の小型犬で多く発症し、具体的な犬種はキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、マルチーズ、チワワなどがあげられます。予防策はありませんが、心臓に負担をかけない食事や運動、適正体重を保つことなどで病気の進行を遅らせることができるでしょう。
老犬の息が荒いときは寿命が近い?
老犬の息が荒いことは、犬の身体機能の低下に起因していることが多いため、犬の老衰を示しますが、寿命が近いとまでは言い切れないでしょう。
荒い呼吸の原因が呼吸器系や心臓疾患などの病気であった場合、そこから何かしらの死亡理由に繋がる可能性はゼロではありませんが、適切な治療によって健康を維持することもできます。
例えば、心不全の老犬は息切れを経験することがありますが、適切な治療で症状を管理できることもあります。病気であっても、飼い主との生活の質や習慣を変えることなく、健康に暮らすこともできます。
したがって、「老犬の息が荒い」ことを「もう寿命が近い」と悲観的に捉える必要はないように思えます。飼い主は適切な治療や対応によって、できる限り生活の質を落とさずに暮らせるようにケアすることが重要です。
まとめ:老犬の呼吸の異常を察知し、適切な対処を!
生命維持に不可欠な呼吸。それができない、またはしづらい状況というのは命にかかわる非常に危険な状態です。特に老犬の場合は状態が急変することに備えて、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。
また、不調のサインである異常な呼吸に素早く気づくことは、愛犬が元気に過ごすためのカギになります。「もう年だから」と年齢のせいにするのではなく、体や行動に変化がないか日ごろからチェックするようにしましょう。
さらには、老犬の息が荒くなる原因や病気について知り、対策・予防することも大切です。この記事を参考にしつつ、獣医師ともよく相談して愛犬に合った対策をしてみてください。
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