老犬がかかりやすい前庭疾患とは?症状や治療について解説!

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愛犬が突然フラフラ歩くようになったり、愛犬の目が小刻みに動いているのを見たりするとビックリしてしまいますよね?

「何か大変な病気かもしれない」

「どう対処したらいいのだろう」

などと不安や疑問を抱える飼い主さんも多いと思います。

そんなとき、前庭疾患についての正しい知識を知っていれば、冷静に適切な対処をすることができるでしょう。

この記事では、前庭疾患の症状や原因、治療法などを説明した上で、前庭疾患を発症した愛犬に飼い主ができるケアのポイントについて解説しています。これらを参考にして、愛犬が前庭疾患になっても落ち着いて適切なケアを行いましょう。

 

老犬がかかりやすい前庭疾患とはどんな病気?

前庭疾患は「ぜんていしっかん」と読みます。

前庭疾患は、平衡感覚をつかさどる“前庭”に異常が起こり、様々な神経症状が現れる病気です。

前庭とは、平衡感覚をつかさどる器官の総称を指し、末梢前庭と中枢前庭の2つに分けられます。まとめると次のような感じです。

・末梢前庭…三半規管、前庭、前庭神経

・中枢前庭…延髄の一部、小脳の一部

 

末梢前庭は、耳の奥にある内耳に存在し、三半規管では前後左右や体の回転を、前庭では体の傾きを感知することができます。そうして感知した信号を脳に伝えるのが前庭神経です。

中枢前庭は脳の中に存在し、感知した信号を受け取る場です。

 

犬の前庭疾患の症状

子供のころ、回転する椅子で何度も回って遊んだ経験がある人は、そのときの自分の様子を思い出してみてください。犬の前庭疾患は、そのときの目が回って気持ち悪い感じがしばらく続いている状態です。

犬の前庭疾患では、次のような症状が見られます。

・頭が片方に傾く

・黒目が左右に細かく揺れる(眼振)

・同じ方向にグルグル回る

・フラフラ歩く

・倒れて、立ち上がれない

・食欲不振

・嘔吐

・元気がない

・ヨダレを大量に垂らす

・足を広げてバランスをとるように立つ

・床などの硬いものの上で眠ろうとする

 

前庭疾患は、なんの前ぶれもなく突然発症することが多く、重い症状が確認されることが良くあります。そのため、前庭疾患の症状を知り、愛犬の不調に早めに気づくことが大切です。

とはいえ、多くの場合は焦る必要はありません。なぜなら、前庭疾患の症状は24時間をピークに、2~3日程度で改善し始め、2~3週間で自然に落ち着くことが多いと言われているからです。

「それじゃあ、病院に行かなくても良いのでは?」

と考える飼い主さんもいるかもしれません。そこで、次の章では前庭疾患を発症した愛犬を病院に連れていくべきかについて解説します。

 

前庭疾患の症状が見られたら動物病院を受診するべき?

結論から言うと、前庭疾患の症状が見られたら、できるだけ早く動物病院を受診するようにしてください。

なぜなら、前庭疾患を引き起こしている原因によっては、回復に時間がかかる場合や早急な治療が必要な場合があるからです。さらに老犬は、前庭疾患の影響で数日の間食べものを食べず横になっていることで、衰弱したり寝たきりになったりすることもあります。そういうわけで前庭疾患の症状が見られたら、できるだけ早く獣医師に診てもらいましょう。

 

犬の前庭疾患の原因

上記で、前庭が存在する場所によって大きく2つに分けられることを示しましたが、前庭疾患を引き起こす原因も、異常が起きている場所によって主に以下の3つに分類されます。

・突発性  

・末梢性   

・中枢性

 

突発性

突発性前庭疾患は、原因が特定できない前庭疾患です。老犬でよく見られることから老年性前庭症候群とも呼ばれています。気圧の変化で発症するとも言われていますが、はっきりとは分かっていません。

 

末梢性

末梢性前庭疾患は、上記で紹介した末梢前庭に異常が起きているもので、次のような原因があります。

・中耳炎

・内耳炎

・内耳に毒性のある薬物(アミノグリコシド、クロルヘキシジンなど)

・前庭神経炎

・異物

・腫瘍

・外傷

・甲状腺機能低下症

・先天性

 

中枢性

中枢性前庭疾患は、上記で紹介した中枢前庭に異常が起きているものです。考えられる原因には次のようなものがあります。

・脳炎

・腫瘍

・脳梗塞

・外傷

・脳出血

・水頭症

・脳脊髄炎

・中毒(メトロニダゾール)

・ビタミンB1欠乏

 

前庭疾患の中でも中枢性のものはまれで、重い病気による場合が多いということもあって経過が悪い傾向にあります。

 

犬の前庭疾患は治るの?

犬の前庭疾患は1度発症すると再発することも多く、「治る」というよりは「症状が落ち着く」という言葉が正しいかもしれません。それでいうと、前庭疾患は数週間ほどで症状が落ち着き、今まで通りの生活を送れることがほとんどです。

しかし中には、後遺症が残ったり寝たきりになってしまったりすることも少なくありません。

 

治療法

前庭疾患は原因がさまざまであることから、その原因に対して治療を行います。しかし、突発性の場合は原因が分からないので、症状を軽減させる対症療法を行います。

末梢性の場合は、原因となっている耳の病気や腫瘍などに対して、投薬や手術を行うことで治療しますが、症状が重い場合には機能が回復しないことも。手遅れにならないためにも、早期の治療が大切です。

最後に中枢性の場合ですが、前庭疾患の原因を特定できたとしても、中枢前庭は脳の中心部にあり、手術が難しい場合があります。このことから、積極的な治療を行わない場合は対症療法を行うことになるでしょう。

ちなみに、前庭疾患を発症した犬に行われる対症療法は以下のようなものがあります。

・めまいに対するジアゼパム

・嘔吐に対する制吐剤

・食欲がない場合の点滴

・水分摂取が難しい場合の点滴

・脳炎などが疑われる場合のステロイド

・甲状腺ホルモンの内服

 

前庭疾患の治療としては、自然に回復するのを待つしかない場合も多いということが理解できたでしょうか?

そのうえで、

「死に直結するような病気じゃないということ?」

「愛犬の寿命への影響はどうなの?」

と不安を感じている飼い主さんのために、前庭疾患を発症した際の愛犬の寿命への影響について解説します。

 

寿命への影響

前庭疾患を発症した際の寿命への影響は、原因と積極的な治療を行うかどうかによって違ってきます。例えば、内耳炎や中耳炎では命にかかわることはないでしょう。

しかし、脳梗塞が原因の場合は、脳梗塞を治せるかどうかにかかっています。つまり、前庭疾患の原因となる病気が寿命を左右するものであれば、原因となる病気の治療ができるかどうかで寿命が決まるということです。

また、積極的な治療を行わなければ、徐々に症状が悪化していくことになるでしょう。

 

犬の前庭疾患を予防する方法

末梢性前庭疾患や中枢性前庭疾患は、その原因となるものを予防することができます。しかし、突発性前庭疾患は原因不明なため予防することができません。

年をとるにつれてどの犬種でもかかりやすくなる前庭疾患ですが、柴犬や柴犬系雑種、ドーベルマン・ピンシャーやジャーマン・シェパードは遺伝的にかかりやすいとされています。また、血統内に発症している犬がいた場合は注意してあげるとよいでしょう。

 

飼い主さんにしてほしいケアのポイント

犬の前庭疾患は、症状が出てから元の状態に回復するまでに、数週間から数カ月はかかる場合が多いため、その間の飼い主さんのケアがとても重要です。そのため、前庭疾患の症状が見られる愛犬の介護ができる知識を飼い主さんもある程度身につけておく必要があります。

そこで、この章では前庭疾患を患う犬の飼い主さんに、ぜひやってほしいケアのポイントについて詳しく解説していきます。

 

コミュニケーションをたくさんとる  

まずは、愛犬を不安にさせないためにコミュニケーションをたくさんとるようにしましょう。突然の前庭疾患の発症で、愛犬自信も何が起きたのかわからず、パニックになっているかもしれません。

そんなときは、愛犬を落ち着かせるためにもできるだけそばにいて優しく声をかけてあげてください。ちなみに、常に首が傾いている犬は首が凝ったり、傾いた方に体重がかかることで体のバランスが崩れたりします。そこで、実践してほしいのがマッサージです。たくさん話しかけながら、愛犬のこわばった筋肉をほぐしてあげましょう。

 

リラックスできる環境を整える

前庭疾患によって頭が傾いた犬が横になろうと思っても、普通の平らなベッドでは頭が浮いてしまったり首に負担がかかったりしてリラックスできないことがあります。そこで活用したいのが、毛布やクッション。それらを首の下に置くと、無理のない体勢でリラックスできるだけでなく床ずれの防止にもつながります。

ネットショップでは、介護用のベッドも販売されているのでそれを使うのもよいでしょう。

 

部屋を明るくする  

前庭疾患の特徴に、暗い場所や寝起きに症状悪化することが多いというものがあります。それは、前庭疾患では平衡感覚が異常になっているため、視覚に頼って体のバランスを保っているからだと考えられます。

そのため、できるだけ部屋を明るく保つようにしましょう。

 

倒れても大丈夫なようにする

前庭疾患によって倒れやすくなっている愛犬がケガをしないためにも、安全な環境を作ることは必須です。具体的には、不要なものを片付けたり、家具の角にはカバーをしたりするとよいでしょう。

  

隙間に入れないようにする

健康な状態であれば隙間に入っても抜け出せるのですが、前庭疾患を患っている場合は自力で抜け出すのは困難です。そのため、部屋に隙間を作らないようにしましょう。

   

滑らないようにする

ただでさえ前庭疾患の影響でふらつきやすいのに、フローリングなどの床が滑りやすい素材だと転びやすくなってしまいます。そんなときは、床にマットを敷くのがおすすめです。

また、靴下や靴を履くのに抵抗がない場合は、滑り止めつきの靴や靴下をはかせることであしが滑ってしまうのを防いで、足腰への負担を軽くすることができるでしょう。

   

できるだけ自ら歩かせる

フラフラ歩いたり、倒れたりする愛犬に対して、安静にしてほしいというのが飼い主さんの本音かもしれません。しかし、前庭疾患の犬は歩いたり走ったりすることで体のバランスを保つ感覚を再調整するので、できるだけ自力で歩かせた方がよいのです。

介助用ハーネスやバスタオルなどを使って、上手に歩行の補助をしてあげましょう。このとき、無理をさせると足腰に負担をかけることになるので、歩きたいと意思表示しているときに支えてあげるというスタンスでいましょう。

 

参照:米国前庭疾患協会

https://vestibular.org/sites/default/files/page_files/Vestibular%20disease%20in%20dogs%20and%20cats.pdf

 

ご飯は消化によいものを少量ずつ与える

前庭疾患によって、気持ちが悪い状態が続いているとご飯を食べても吐いてしまうことがあります。ですが、症状が落ち着いて食欲が出てきたときには、愛犬の様子を見ながら消化によいものを少しずつ与えるようにしてください。

自力で食べるのが難しそうなら、食事の補助をしてあげることでご飯を食べてくれることも。

 

脳に適度な刺激を与える

前庭疾患の回復時には認知機能障害を起こすこともあります。そうならないためにも、愛犬の調子がよさそうな時は外に連れて行きましょう。

寝たきりになってしまった場合でも、日の光や外の匂い、音や風などたくさんの刺激を感じることができます。

 

まとめ:老犬が前庭疾患を発症したら、できるだけ早く動物病院へ!

前庭疾患とは、平衡感覚をつかさどる前庭に異常が起こることで症状が現れる病気でした。また、前庭疾患の多くが数週間で自然に回復するということも分かったかと思います。

だからといって病院を受診しなくてもよいというわけではありません。前庭疾患を引き起こしている原因によっては、早期の治療が必要な場合もあるので、できるだけ早く動物病院を受診することをおすすめします。

そのうえで、症状が現れてから回復するまでは飼い主さんのサポートが必須。この記事を参考にして、前庭疾患を患っている愛犬がストレスなく生活できるようにしましょう。