「もう老犬だし、狂犬病のワクチン打たなくてもいいかな?」
「老犬だからワクチンを打ったら副作用大丈夫?」
これまで、動物病院やペットショップから言われて、毎年打ってきたワクチン。愛犬が高齢になり、このような疑問をもつ飼い主さんも多いでしょう。ここでは、ワクチンに関する基礎知識から、その必要性、また副作用についても説明していきます。
目次
ワクチンについて
犬用のワクチンには、大きく分けて狂犬病ワクチンと混合ワクチンの2種類あります。それぞれがどう違うのかをここから確認していきましょう。
狂犬病ワクチン
狂犬病は、日本では50年以上も発生していないこともあって、あまり認識されていません。しかし、狂犬病はかなり危険な病気です。
人間を含む全ての哺乳類と鳥類に感染し、発症した場合の致死率はほぼ100%とされており、海外では毎年数多くの死者を出す病気です。農林水産大臣が認定する「狂犬病が発生していない地域」は、日本以外に6地域しかないほど、実は世界中で流行しているのです。
そのため、日本では飼い犬に狂犬病に対するワクチンの接種をさせることが、法律によって義務づけられています。
混合ワクチン
混合ワクチンは、狂犬病以外の病気に対するワクチンです。世界小動物獣医師会によって、コアワクチンとノンコアワクチンに分類されています。
コアワクチン
コアワクチンは、感染力・致死率の高い病気を防ぐために生活環境に関わらず全ての犬で接種が必要とされています。
ノンコアワクチン
ノンコアワクチンとは、その犬がいる地域での発生状況や生活スタイルによって感染のリスクがあると判断される場合にのみ、接種が必要とされるワクチンのこと。
現在市販されているワクチンは、対応できる病気の数によって2種、5種、8種といった具合に分けられます。5種以上のワクチンは、基本的にはコアワクチンに対応していると考えてよいでしょう。混合ワクチンの接種は法律上の義務ではなく、飼い主の任意とされています。
狂犬病ワクチンは必要なのか?
狂犬病ワクチンは法律で毎年の接種が義務づけられており、絶対に必要なものです。では、なぜそれほど必要とされているのか解説していきましょう。
狂犬病ワクチンが義務付けられている理由
ヒトや動物の国内外の移動が盛んな現代では、日本国外からいつ狂犬病がもちこまれても不思議ではない状況にあります。理論上は狂犬病ワクチンの接種率が70~75%を下回ると、日本国内でも狂犬病が流行する可能性があるといわれています。日本国内での狂犬病再流行を防ぐため、毎年のワクチン接種が義務とされているということです。
法律では原則必要
狂犬病ワクチンは年齢に関わらず、生涯にわたり接種することが義務付けられています。基本的には高齢という理由だけで免除されることはありません。しかし、病気療養中や体調不良などで獣医師が「接種不可」と判断した場合は、ワクチン接種を免除してもらうことができます。高齢になって、体調を崩すことが多くなってきた愛犬にワクチンを接種しても大丈夫なのか不安な時は、かかりつけの獣医さんに相談してみましょう。
免除になった時の手続きについて
狂犬病ワクチンを免除してもらった際は、動物病院で「予防接種実施猶予証明書」を発行してもらい、役所で免除の手続きをする必要があります。免除の猶予期限は1年間となっているため、以後も接種不可と判断された場合は、その都度証明書を発行してもらいましょう。
混合ワクチンは必要なのか?
混合ワクチンの接種は飼い主に任されており、義務付けれられているものではありません。その必要性はご自身が動物病院と相談しながら判断する必要があります。摂取の必要性を判断する方法や、愛犬に負担の少ない接種の仕方を見ていきましょう。
混合ワクチンは何歳まで必要か?
混合ワクチン自体が任意接種であるため、何歳まで必要かという明確な目安はありません。したがって、飼い犬の状態とライフスタイル次第であり、詳しくはかかりつけ医に相談することが推奨されます。
混合ワクチンを打つことには、メリットとデメリットの両方の側面がありますので、これらを理解したうえで判断しましょう。
混合ワクチンの接種を推奨できない例
下記に当てはまる場合、ワクチン接種は推奨できません。
・過去に混合ワクチンに対するアレルギー反応がでた
・なんらかの免疫疾患を発症している
・腫瘍に代表される消耗性の病気を発症している
基本的には狂犬病ワクチンの接種が猶予される例と似ていますが、法律で義務づけられていない分、より広く緩やかな条件です。高齢だとしても健康な状態でしたら、基本的には接種することが推奨されています。あくまで飼い主さんの任意なので、獣医師と相談してみましょう。
ワクチンの副作用
愛犬を感染症から守るためのワクチン接種ですが、ワクチンは病原性を弱めたウイルスや死んだウイルスから作られるため、副作用が現れることもあるでしょう。主に以下のような症状が現れます。
・アナフィラキシーショック(痙攣、呼吸困難、血圧低下など)
・嘔吐・下痢
・発熱
・皮膚の痒み
・顔面の腫れ
アナフィラキシーショックはワクチン接種後すぐに現れる急性のアレルギー反応です。放置すると命を落とす危険性がありますが、アナフィラキシーショックが起こることは稀で、発症しても迅速かつ適切に処置をすれば回復することが多いです。
その他の副作用も時間が経つとおさまりますが、副作用が現れたときは必ず動物病院で診てもらうようにしましょう。
接種する時間帯も重要になってきます。夕方以降に接種してしまうと、もし副作用がおきても病院が開いていないという事態になりかねません。接種はできるだけ午前中に行うと飼い主も安心できるはずです。
老犬(高齢犬)は副作用のリスクが高まるの?
健康であれば、単に高齢ということだけで、ワクチン接種による副作用のリスクが高くなることはないといわれています。ただし、高齢になればなるほど、何らかの病気が潜んでいる可能性も高くなります。
ワクチン接種のリスクを正確に見きわめるため、また、病気の早期発見につなげるためにも、日頃の小まめな健康チェックが最も大切です。
副作用のリスクを抑える方法
ワクチン接種の副作用リスクを抑えるには、下記の方法が考えられます。
・定期的に健康診断を受診させ、病気の早期発見に努める
・狂犬病予防注射はかかりつけ医にお願いする
・接種する混合ワクチンの種類を変える
・抗体価検査を利用する
・摂取後はシャンプーやお散歩を控える
それぞれ詳しく見ていきましょう。
定期的に健康診断を受診させ、病気の早期発見に努める
最近では、動物病院でも健康診断キャンペーンを実施している病院が増えてきました。定期的にそのようなキャンペーンを利用するのもおすすめです。病気を早期派遣してあげられると、副作用のリスクを減らすことができます。
狂犬病予防注射はかかりつけ医で
老犬の場合、いつも診てもらっているかかりつけの動物病院での接種がおすすめです。
たとえ年齢が同じであっても、身体の状態はそれぞれ全く違います。また、これまでの健康状態や、その子の体調を理解している獣医師の先生であれば、予防注射を実施すべきかどうかより正確な判断が可能です。集団接種に比べると少しだけ料金が高くなりますが、安心・安全のためにかかりつけ医にお願いすることをおすすめします。
接種する混合ワクチンの種類を変える
飼い犬の生活スタイルや活動範囲によって、打つべきワクチンも変わってきます。
例えば、愛犬が若い頃は一緒にアウトドアを楽しんでいたけど、年を取ってから活発に動くことが減ったような場合で、「レプトスピラ」に対するワクチンも打っているのだとすれば、デメリットのほうが大きいかもしれません。
接種する混合ワクチンは愛犬の状態を観察しながら見直していきましょう。
抗体価検査を利用する
最近では、抗体価を手軽に測定できる動物病院が増えてきました。愛犬が高齢になってきたらワクチン抗体検査を上手に活用して、必要な時だけワクチンを接種するといいでしょう。
ワクチンを接種すると、そのウイルスから体を守ってくれる「抗体」が作り出されます。抗体はしばらく体の中に存在し続けますが、ウイルスが入ってこないと徐々にその力を失っていきます。ワクチン抗体検査では、血液検査によってその犬の持っている抗体の状態を調べます。危険なウイルスに感染したとき、ウイルスを追い出すだけの抗体が残っているのかどうかを調べ、今の抗体の状態ではウイルスと戦うことができないと判断された場合のみ、追加でワクチン接種を行いましょう。
抗体検査の費用は?
ワクチン抗体検査にかかる費用は動物病院によって多少前後しますが、おおよそ8千円ほどです。
検査キットが常備されている病院なら採血から30分程度で結果がわかります。毎年春に実施するフィラリア検査も採血が必要なので、そのとき一緒に調べてもらうことをおすすめします。費用はフィラリア検査とワクチン抗体検査それぞれで発生しますが、採血が1度で済むので愛犬の身体にかかる負担を減らすことができます。
摂取後はシャンプーやお散歩を控える
ワクチン接種後はなるべく安静に過ごすようにしましょう。当日のシャンプーや激しい運動は控えてましょう。外でしかトイレができない場合はお散歩に連れて行っても構いませんが、なるべく早めに切り上げ、不要な外出は控えましょう。
狂犬病ワクチンを打たなかった場合
獣医師の判断により狂犬病予防接種が免除された場合を除き、飼い犬に狂犬病のワクチンを受けさせなかった場合、20万円以下の罰金の対象となります。
2019年には狂犬病予防法の違反により174件もの検挙数が報告されています。もし、狂犬病予防接種を忘れてしまった場合は、早めに獣医に相談しましょう。
また、ペットホテルやドッグランなどの施設では、1年以内にワクチン接種をしていない犬の立ち入りを禁止したり、施設利用の際に「ワクチン接種証明書」の提出を義務付けているところもあります。各施設に前もって確認しておくと安心でしょう。
狂犬病の恐ろしさやワクチンの重要性についてはこちらの記事を参照ください↓↓
狂犬病ワクチンの接種が猶予される例を紹介!
高齢で病気をしている犬でも狂犬病ワクチンは接種しなければいけないのでしょうか。その場合は、まず動物病院に相談してみましょう。動物病院で狂犬病ワクチン接種のリスクが高いと判断されれば、接種を1年間猶予してもらうことができます。
接種が猶予される例として、以下のようなものが挙げられます。
・過去に狂犬病ワクチンに対する重いアレルギー反応がでた
・重い免疫疾患を発症している
・腫瘍に代表される重い消耗性の病気を発症している
ただし、高齢であっても健康であると判断されれば、猶予は受けられません。獣医師の判断によるので、接種リスクが心配な方はまず動物病院に相談してみましょう。また猶予を受けられた場合でも、その期間は一年間なので、次の年にはまた動物病院で診てもらわなければなりません。
まとめ:老犬にも狂犬病ワクチン接種は必要! しかし、理由によっては猶予も可能。
狂犬病ワクチンは、老犬であっても接種するのが大原則です。ただし、なんらかの健康上の問題を抱えている場合には、動物病院で獣医師に相談してみましょう。愛犬が大病を患って苦しまないよう、そして日本が安全な国で居続けられるよう、義務をしっかりと全うしましょう。
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