愛犬の老衰は共に時を過ごす以上、避けられないものです。
犬は最期を迎える前に老衰でご飯を食べない、水を飲まないなどの異常を起こすことがあります。
本記事では犬の老衰症状を紹介します。
亡くなる間際の末期症状や亡くなったあとの対処も解説するので、大切な愛犬の最期を看取るのが近いと感じている方は必見です。
犬の老衰の症状
犬の全体平均寿命は、14歳前後だといわれています。寿命に近づき犬の老衰が顕著になってくると、以下のような症状が表れるため気をつけましょう。
- ・食欲がなく、水も摂らなくなる
- ・排泄のコントロールができなくなる
- ・体温が下がる
- ・痙攣、身体が震える
- ・呼吸が乱れる
- ・反応が鈍くなる
- ・睡眠時間が長くなる
- ・動きがゆっくりになる
各症状の詳細や対策、寿命までの近さをこれから詳しく解説するのでぜひご覧ください。
食欲がなく、水も摂らなくなる
犬が年を取り老犬になると、食事や飲水をするための身体能力が低下します。味覚や嗅覚が鈍くなったり、消化機能が落ちてしまうのは代表的な例です。運動をしなくなるため、基礎代謝が低下することや、口内環境が悪くなり食事をしづらくなるのも一因でしょう。
以下の表を参考にして、老犬が上手に食事をできるよう工夫してあげましょう。
症状 | 対策 | |
シニア期
(6~9歳前後から) |
床に置いたフードが食べにくくなり個体によっては介助が必要になる | 食欲がないなら1食の量を減らし、回数を3回程度に増やす |
ハイシニア
(8~12歳前後) |
食欲がなくなり大幅に体重が減る
自力で食べることが難しく食事をうまく飲み込めない |
食事は食べられるだけ少量ずつ3~5回に分けて与える |
シニア期では残り寿命を心配する必要はありませんが、ハイシニアになると愛犬の寿命は残り3分の1程度だと推測されます。しかし、水を一切取らなくなる場合、愛犬の状態は深刻です。水を拒絶する場合には、すぐ動物病院へ愛犬を連れて行ってください。
排泄のコントロールができなくなる
犬は高齢になると、排泄のコントロールが上手くできなくなります。以下のような機能低下が現れた場合、愛犬が老衰で弱っているシグナルのため注意しましょう。
- ・膀胱に尿が上手く貯められなくなる
- ・歩行機能が弱りトイレが間に合わなくなる
- ・筋肉が緩み便や尿を漏らす
- ・腎機能の低下で尿量が増加する
排泄コントロールができない場合でも、筋力が衰えているだけなら一定期間生存ができる可能性は高いです。内臓疾患を併発している場合には、残り寿命が短くなる傾向にあります。
獣医師と連携し適切なケアと治療をすれば、寝たきりでも余命は延ばせます。愛犬の排泄コントロールに異常を感じたら、早めに動物病院へ連れて行きましょう。
体温が下がる
犬の平熱は38~39℃ですが、シニア期に入った老犬の場合平熱より体温が低くなる場合があります。老犬の体温が37.5°以下になった場合、低体温症と診断される危険な状態です。
老犬は筋肉から熱を発することが難しくなったり、抵抗力が下がったりしているため、体温調節がうまくできません。甲状腺の機能が低下している場合にも、低体温症を引き起こすことがあります。
以下のような症状は、愛犬の低体温症を疑う重要なシグナルです。
- ・体が冷たく呼吸が浅い
- ・元気がなく常に震えている
- ・食欲が低下する
愛犬が低体温を引き起こしたら、まず室内を暖かくし温めた毛布などで体を包んであげてください。飲食ができるようなら、温かい飲み物をあげるのも効果的です。愛犬の状態が落ち着いたら、動物病院で早めに検査を受けましょう。
なお、急激に体温が下がり元に戻らない場合は老犬の最期がすぐそこまで迫っています。通院後に状態が改善しない場合には、体を温めながら看取りの準備を始めてあげてください。
痙攣、身体が震える
頻繁に何らかの発作を起こし、痙攣して体が震えるのも老犬特有の症状です。老犬は食事が取りづらくなり、何らかの疾患がなくても低血糖を起こして震えることがあります。
食欲がなくなってきた犬には少量の食餌を回数を増やして与えましょう。低血糖を防止でき、痙攣や体が震える回数を減らせます。
なお、低血糖を起こしていない場合でも、以下のような疾患で体が震える可能性はあります。
- ・脳腫瘍
- ・てんかん
- ・腎不全
- ・肝不全
初めて痙攣や体の震えが起きたときには、必ず動物病院を受診しましょう。原因を特定したり、痙攣止めの薬を処方してもらったりできます。
低血糖による痙攣やてんかんはシニア犬に多く、それそのものが余命につながることはありません。しかし、腎不全や肝不全で痙攣が起きた場合、臓器の機能は大幅に悪化しており愛犬の余命は残りわずかと考えられます。
呼吸が乱れる
シニア期に入った犬は呼吸器や循環器の機能が弱り、酸素の取り込みが難しくなります。呼吸が浅く荒くなり、愛犬が苦しそうにしていたら早めに動物病院を受診するべきです。
平均的な犬の呼吸数は、60秒間で10~35回です。吸って吐いてを1カウントとし、10秒の数を6倍すれば1分の呼吸数を算出できます。平均より呼吸回数が多い場合には異常を疑ってください。
異常を感じたら犬をなるべく興奮させないようにし、うつ伏せの楽な姿勢を保ってキャリーで病院に連れて行きましょう。動物病院では心臓や肺機能の検査を行い、原因の特定をします。原因が肺や心臓の異常と分かったら、薬の投与や酸素の吸入などの処置を実施してもらってください。
呼吸が乱れていても老化による自然なものならば、動物病院での治療や緩和ケアで十分余生を全うできます。肺の状態が悪化していたり、心臓に深刻な異常がある場合には余命が近づいている可能性も否めません。
特に最期を迎える直前の無呼吸・呼吸を繰り返す「チェーンストークス」が見られる場合には、臨終のときがすぐそこに迫っています。
反応が鈍くなる
愛犬の反応の悪化は、耳や目などの感覚が鈍っているため起こるものです。反応が鈍ってきたら、対策を考える前になぜ犬が反応しないのかをまず明確化させましょう。
視力が低下しているなら、床を叩くなどの衝撃で愛犬を呼ぶのが効果的です。聴力が大きく低下しているなら、近くで声をかけてから触るなどの工夫も効果的でしょう。嗅覚の低下が見られ食欲不振があるなら、フードを温めて匂いを引き立たせるなどの工夫で食欲を取り戻すかもしれません。
反応の鈍感化は、ハイシニアになるとよく見られます。老犬に話しかけたり触ったりしても反応しないなら、特に注意が必要です。無反応に加え呼吸異常や体温の低下などが見られたら、臨終の時が近い可能性があります。
睡眠時間が長くなる
犬は1日12~15時間眠る生き物です。そもそも睡眠時間が人間より長いのですが、老犬になるとさらに寝ている時間が増えます。 18時間以上眠っている場合には、年を取ったため嗜眠症状が出ている可能性が高いです。
以下のような症状が過眠と共に表れたら、何らかの病気が隠れている可能性もあるため気をつけましょう。
- ・ご飯を食べず体重が減る
- ・足を引きずったり、腰が痛そうな様子を見せたりする
- ・脱毛が起こる
- ・皮膚にかゆみなどの異常が表れる
- ・生活が昼夜逆転し夜鳴きをする(認知症)
なお、寝てばかりになるのはシニア期に入った頃から個体差があり、それだけで余命の判断はできません。しかし声をかけても無視したまま反応しない場合、愛犬の余命はすぐそこに迫っています。
安らかに眠ったまま最期を迎える子もいるため、介護用ベッドなどを用意し快適な環境を整えてあげてください。
動きがゆっくりになる
愛犬は老衰期に入ると、人間と同じように動きがゆっくりになります。これは年をとったために、以下のような症状が表れることが原因です。
- ・体が疲れやすくなっている
- ・筋肉や関節などに痛みを感じる
- ・代謝が落ちて動くことそのものが少なくなる
これらの症状が出てくると愛犬は散歩にも行きたがらなくなり、じっとしていることが増えます。全身の筋肉量が減ると足がふらついて、フードを食べにくくなることもあるでしょう。
動きがゆっくりになってくると全身の筋肉量が減るため、シニア犬が肥満化する可能性もあります。筋力を取り戻すためも獣医に相談し、適切なリハビリを行ってください。散歩を無理のない適度な範囲に変えたり、住環境を高齢犬のためにバリアフリー化するのが効果的です。
なお、これらの症状は愛犬がハイシニア期に入ると起こりやすいです。8~12歳前後であり、残りの寿命が3分の1程度にまで少なくなっているサインでもあります。
愛犬が死ぬ間際の症状
愛犬のシニア期と終末期は、似て非なるものです。シニア期はあくまで高齢の状態を指す指標であり、その状態が最期へつながることはありません。
しかし、老犬が以下のような状態になっているなら、最期の時を目前にした終末期を迎えている可能性があります。
- ・体温が徐々に下がる
- ・意識が遠のき呼びかけても反応が薄い
- ・便や尿が漏れる
- ・普段と違う臭いがする
上記4つの状態になっている場合、亡くなるまでに残された時間はわずかです。悔いなく看取りができるよう、以下から始まる解説をしっかり読んでおきましょう。
体温が徐々に下がる
老犬は体温が下がりやすく、低体温状態をすぐ引き起こしてしまう傾向にあります。体を温めて元の状態に戻るなら、低体温が直接最期へつながる可能性は低いです。
しかし、体温が元に戻らずどんどん下がっていく場合には終末期を覚悟しなくてはなりません。愛犬が亡くなる間際には通常38℃以上ある体温が、人間の平熱より低下します。当然、犬は寒がるため、苦しまないよう極力体を温めてあげるのが大切です。
以下のような太い血管が集まる場所をヒーターや湯たんぽで温めると、愛犬の寒気を軽減できます。
- ・首
- ・脇の下
- ・太ももの内側
湯たんぽを使う場合には老犬がヤケドをしないよう、必要に応じて毛布でくるむなどの処置を行ってください。
意識が遠のき呼びかけても反応が薄い
亡くなる直前の愛犬は、すべてにおいて無反応になります。声をかけたり触ったりしても反応しない場合には、最期の時がすぐそこに迫っているかもしれません。
シニア期になって歳をとって聴力や視力が低下していても、反応を一切返さない犬はあまりいません。臨終の時が近づいている犬が全く反応しないのは、酸素濃度の低下や低体温で意識が遠のいているからです。
愛犬は飼い主の声が完全に聞こえていないわけではなく、反応する力が残されていない状態です。最期を迎えるまで、優しい声で話しかけてあげましょう。
便や尿が漏れる
いよいよ愛犬の心臓が止まる直前になると、尿や便が一気に漏れてしまいます。これは肛門の筋肉が完全に緩んでしまい、その子の意思に関係なく起こる異常です。
寿命で亡くなる前の排泄物は、下痢やタール便が多いといわれています。腸の働きの悪化や消化管からの出血が、異常な便の原因です。
これらの排泄物は、愛犬の体を大幅に汚す可能性があります。臨終の時が近いと感じたら、愛犬の下にペットシーツなどを敷いておきましょう。排泄が起こったらペットシーツを片付け、愛犬の体周りをきれいに拭いてあげてください。
普段と違う臭いがする
愛犬が健康だった頃と違う匂いがし始めたら、その子が旅立つサインかもしれません。亡くなる直前の犬は、尿臭のような異臭を放つようになります。
焦がした松ヤ二に例えられるこの香りは、人にとっては不快な匂いです。いつもとは全く違う異臭のため、愛犬の最期を理解できるでしょう。口の匂いだけでなく、体全体から異臭がし始めたら注意が必要です。
寿命で亡くなる前の愛犬は、代謝が極限まで悪化し異臭を放ちます。明らかに匂いが違うと感じたら、落ち着いて看取りの準備を始めましょう。
老衰かなと思ったら動物病院へ
愛犬が老衰を迎えていると感じたら、早めに動物病院へ連れていきましょう。老衰と似た症状を起こす疾患は多数あり、治療を行えば、愛犬の寿命を伸ばす可能性は充分あるからです。
老犬に多いがんや臓器の不全疾患を診てくれる動物病院を、かかりつけに選んでおきましょう。安心して相談ができるかかりつけ医を見つけておけば、愛犬にもしもの事態が起こっても安心です。
ペットの認知症を診てくれる認知症外来や、終末期の愛犬を安らかに看取るための緩和ケアができる動物病院もあります。病院を探す際には、動物病院検索を活用しましょう。愛犬に合った適切な治療が施せる近隣の動物病院を、素早く正確に探せます。
最期を迎えつつある愛犬に飼い主ができること
生きている以上、愛犬の最期は避けては通れないものです。老衰で最期を迎えつつある愛犬にできることは、3つあります。
- ・生活しやすい環境を作る
- ・介護・看護など体のケアをする
- ・スキンシップをとり一緒に過ごす時間を大切にする
残された時間をゆっくり過ごせるよう環境を整えたり、不安を軽減できるようコミュニケーションをとったりしてあげましょう。各項目をこれから詳しく解説します。
生活しやすい環境を作る
愛犬がターミナル期に入ったら、空調を徹底し暑さや寒さから体を守ってあげる必要があります。呼吸器を守るために、湿度の管理も重要です。室温は20℃程度、湿度は40~60%程度に保つと老犬が過ごしやすくなります。
極力段差を少なくする、バリアフリー環境を整えるのも重要です。床素材を滑りにくいものにしたり、段差を軽減するスロープを設置したりしてあげてください。
認知症の症状が出ている子や視力が低下した子は、空間把握能力が弱る可能性があります。隙間に入り込んで出られなくなる事態や衝突事故を防ぐために、危険だと思う箇所は柔らかいものでふさいだり保護したりしてください。
介護・看護など体のケアをする
老犬はほとんど動かなくなり、毎日寝床の近くで生活するようになります。
QOLが高まるよう、長時間寝たままでも問題ない生活環境を整えることは大切です。愛犬が床ずれしないように専用のクッションを置き、体位は定期的に変えましょう。体は定期的に拭き、清潔を保ってあげてください。
ご飯をうまく食べられない老犬には、食事介助も必要です。柔らかい食事や流動食を必要に応じて作成し、小分けにして与えてください。
排泄コントロールができなくなった子には、介助や医療的処置を検討しましょう。排泄できるならトイレへ定期的に連れていき、用を足すよう促しましょう。
自力で排泄できない場合には、オムツの使用や圧迫・カテーテル排尿などの処置が必要です。かかりつけの動物病院を受診し、医師の指示を仰いでください。
スキンシップをとり一緒に過ごす時間を大切にする
反応がなくなったからといって、愛犬はあなたに関する興味を失ったわけではありません。むしろ老犬は視力や聴力が低くなり、周囲の環境を理解できずあなたの愛情を求めています。
愛犬の最期が近くなったら、極力スキンシップをとり、一緒に過ごす時間を大切にしてください。優しく話しかけながら撫でたりそばにいてあげたりするだけで、愛犬の不安は大幅に軽減できるでしょう。
愛犬としっかり接しておけば、別れの際に後悔する感情を軽減できるかもしれません。「もっとそばにいてあげれば良かった」という気持ちを少なくするためにも、介護期の老犬にはしっかり寄り添ってあげることが大切です。
愛犬が亡くなったとき用意すべきこと
愛犬が亡くなってしまったら、慌てず騒がずお見送りの準備をしてあげてください。以下のポイントを押さえておけば、亡くなった愛犬をスムーズに天国へ送れるでしょう。
- ・やることと用意するもののリストを作成する
- ・ペットロスについて知る
愛するワンちゃんに落ち着いて「今までありがとう」の気持ちを伝えるためにも、 これから始まる解説をぜひ読んでください。
やることと用意するもののリストを作成する
愛犬を看取る瞬間は非常につらいものであり、葬儀の際にはうろたえてしまう可能性が高いです。あらかじめ葬儀や納骨などの日程は決めておき、やることリストにまとめておきましょう。
なお、お葬式の方法には以下のようなものがあります。
- ・葬儀場に愛犬を連れていき個別葬する
- ・自治体の斎場などで集団葬をする
- ・訪問タイプの火葬車に依頼をする
- ・私有地の敷地内に土葬する
お葬式を火葬タイプにするなら、お骨をどうするかも決めておきましょう。納骨堂やお墓で供養したり、散骨したりする方法が一般的です。
葬儀場は即日対応しておらず予約が必要なケースがほとんどのため、愛犬の遺体はドライアイスなどで適切に保管しておいてください。
ペットロスについて知る
愛犬が亡くなってしまい、ペットロスに陥ってしまう方はたくさんいます。ペットロスについて事前に知識を深めておき、対策をとれば症状は軽減できるかもしれません。大切な意見をしっかり供養するためにも、悲しみをコントロールできるペットロス対策についてぜひ調べてみてください。
ペットロスから立ち直るためには、感情を思いきり外に出すよう心がけましょう。愛犬が亡くなった悲しみや後悔などは押し殺さず、素直に出した方が気持ちを清算できます。
もし一人で立ち直れないと感じたら、身近な方やペットを亡くした他の知り合いと会話するのも効果的です。
まとめ:愛犬の変化に気づき、悔いのない最期の準備を!
愛犬も老いていくと、今までと同じ生活はできなくなっていきます。
別れを意識しながら、ちょっとずつ「老い」に合わせた生活に変えていくことが重要です。
亡くなる前の愛犬の行動については以下の記事でも解説しているので、読んでみてください。
老犬について知る
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