一般的に、加齢に伴って分泌量が減少すると言われている唾液。そんな老犬がダラダラとよだれをたらしていたら焦ってしまいますよね?
「大変な病気だったらどうしよう」
「病院に連れて行くべき?」
などと不安になる飼い主さんも多いことでしょう。
しかし、よだれが増える原因をしっかりと理解してやるべきことを把握していれば、焦らず適切に対処できるはずです。
この記事では、老犬の正常なよだれと異常なよだれについて紹介した上で、老犬の異常なよだれに気づいたときに飼い主がやるべきことについて解説します。
目次
老犬の異常なよだれに気づくためには?
老犬のよだれが多くなる原因はさまざまですが、早急な処置や治療が必要なケースもあります。そんなとき、異常なよだれの原因となるものを知っておけば、トラブルのサインにいち早く気づくことができるでしょう。さらに、正常な体の反応として現れるよだれについても知っておくことで、よだれが多いという理由だけで不安になる必要がなくなります。
そこでこの章では、まず正常なよだれが増えるタイミングについて見てみましょう。
食べ物を食べる前、食べているとき
犬が食べ物の匂いを感知したり、食べ物の存在を認識したりすると、食べるための準備としてよだれの分泌が盛んになります。愛犬に「マテ」をさせると、口の端からよだれがたれてしまうのはこれが理由です。
ちなみに、このときのよだれには虫歯を予防する役割もあります。
体温が高くなったとき
犬は口を開けてハアハアと呼吸し(パンティング)、唾液を蒸発させることで体温を下げます。このとき、蒸発する水分が多い方が熱を下げやすいので、大量によだれが分泌されるのです。また、パンティング中は口が開いたままになっていることもよだれが多くなる理由になります。
リラックスしているとき
あなたは、寝ている愛犬の半開きになっている口からよだれがたれているのを見たことがありませんか?これは、副交感神経の働きによるものです。
そう聞くと「副交感神経はよだれを抑制し、交感神経が促進するのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、よだれの分泌に関しては、両方が分泌を促進する働きがあるのです。
ストレス
大嫌いな動物病院や初めてのペットホテルなど、苦手な場所や慣れない環境にストレスを感じて交感神経が働くことで、よだれが多くなります。これは病気ではないので、治療は必要ありません。
しかし、ブルブルと体を震わせる、呼吸が荒くなるといった症状が見られることもあります。そんなときは、体をなでたり、優しく声をかけたりして愛犬をリラックスさせてあげましょう。
乗り物酔い
車などの乗り物酔いをしたときにも、よだれは多くなります。なぜなら、脳内にある吐き気を引き起こす神経と唾液の分泌を促す神経が近くにあるから。乗り物によって吐き気を感じると、唾液の分泌を促す神経も一緒に刺激されてよだれが多くなるのです。
例えば、初めて車に乗った犬や車に乗ることと苦手なところに連れて行かれることが関連付けられている犬でよく見られます。この場合も、すぐに病院に行かなければならないことはありません。
しかし、吐いたり元気が無くなったりすることもあるので、こまめに休憩をとる、酔い止め薬を飲ませるなどの対策を取りましょう。
老犬の異常なよだれについて考えられる5つの原因と対策
上記では、よだれが増えても特に問題のないよだれについて解説しました。
そして、いよいよこの章では、何らかのトラブルのサインとして現れる異常なよだれの原因とその対策について次の5つに分けて解説します。
・熱中症
・異物の誤飲
・誤食による中毒
・危険な生物
・口周りのケガ
熱中症
愛犬の体温が高く、呼吸が荒い場合は熱中症を疑いましょう。老犬になると特に体温調節機能が衰えるので、注意が必要です。
熱中症の対策として重要なのは、とにかく老犬の体温を上げないこと。以下の対策を実践し、老犬を熱中症から守りましょう。
・炎天下の散歩を避ける
・室温20度前後、湿度50%前後になるようにエアコンを活用する
・暑い日に車の中に放置しない
・いつでも新鮮な水を十分に飲めるようにしておく
異物の誤飲
食べ物ではないおもちゃやタオルなどを誤飲したときにも、よだれが多くなります。誤飲は若い犬でよく見られますが、老犬であっても認知症によって食べ物でないものを飲み込んでしまうこともあるでしょう。
この対策としては、食べてはいけない物が口に入る状況を作らないことが大切です。具体的には、以下の方法を実践してみてください。
・ケージの中で留守番させる
・おもちゃやガムなどを与えたら目を離さない
・拾い食い防止のために口輪を使う
・愛犬の口が届く範囲に、飲み込みそうなものを置かない
「うちの子は誤飲したことがないから大丈夫」という飼い主さんでも、念のため人の医薬品・ひも類・靴下やタオルなどの布類を誤飲されないように注意しましょう。アニコム ホールディングス(株)と日本獣医生命医科大学が行った、家庭飼育犬の誤飲に関するインターネット調査によると、上記で示したもので死亡例が多いという報告があります。
参照:家庭飼育犬における誤飲発生の実態に関する分析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jve/16/1/16_35/_pdf
誤食による中毒
私たち人間にとっては体によい食べ物であっても、犬にとっては危険な食べ物がたくさんあります。例えば、タマネギやチョコレートなどの中毒を引き起こす食べ物については知識がある飼い主さんも多いでしょう。
しかし、中毒を引き起こすものは食べ物だけではありません。犬が口にしてはいけないものには、次のようなものがあります。
・ユリやアジサイなどの植物
・殺虫剤や農薬などの薬物
・たばこ
これ以外にも中毒を引き起こすものはたくさんあるので、犬が食べてもよいもの以外は食べさせないようにする工夫が必要です。具体的には、犬が食べてはいけない植物を庭に植えない、室内にも飾らないようにする。薬品を使う場合は愛犬から離れて使用し、終わったらすぐに片付けるなどがあります。
危険な生物
ハチやヘビ、ヒキガエルなどの危険な生物との接触によって、よだれの分泌が増える場合もあります。
愛犬が顔の前を飛ぶ虫をカプッとくわえにいくことはありませんか?この虫がハチの場合、口の中を刺される可能性があるので危険です。ハチが現われたときは、リードで引いたり名前を呼んで気をそらしたりしましょう。
毒蛇に咬まれると、よだれをたらす症状が見られることもあります。たとえ毒を持っていなくても咬まれたら痛いので、ヘビに遭遇しないように草むらの中や田んぼのあぜを避けてお散歩すると良いでしょう。
犬がヒキガエルをくわえると、口から毒が体内に入ることで大量のよだれが分泌されます。ヒキガエルの毒は数時間で死に至ることもあるほど強いので、愛犬の反応が面白いからといってむやみに近づけるのはやめましょう。
口内のケガ
よだれが多い症状に加えて、血の混ざったよだれが観察されたら、口の中をケガしているかもしれません。
この対策として、とがったものを噛ませない、硬いものを長時間噛ませないといった方法があります。
老犬の異常なよだれの原因として考えられる病気
老犬の異常なよだれの原因として、上記の5つ以外に忘れてはいけないのがさまざまな病気によるものです。その病気は大きく口腔系、消化器系、唾液腺系、脳神経系、呼吸器系、感染症系の6つに分類されます。
ここでは、それぞれどのような病気があって、どのような特徴があるのかチェックしていきましょう。
口腔系
口腔内疾患には次のような病気が含まれます。
・口内炎
・舌炎
・口腔内の腫瘍(がん)
この場合、よだれに粘りがある、よだれが臭い、よだれに血が混ざっているなどの症状が見られるのが特徴です。
消化器系
消化器系には次のような病気が含まれます。
・胃腸炎
・胃拡張・捻転症候群
・腎不全
・膵炎
・肝不全
胃拡張・捻転症候群とは、胃にガスがたまりねじれてしまう病気です。胸の深い大型犬でよく起こります。
唾液腺系
唾液腺系には次のような病気が含まれます。
・唾液瘤(唾液が本来とは違う場所に出てしまう疾患)
・唾液腺炎
・唾液腺腫瘍
唾液腺腫瘍は、10歳を超えた老犬での発症が多く、悪性の確率が高いという特徴があります。
脳神経系
脳神経系には次のような病気が含まれます。
・てんかん
・脳腫瘍
・水頭症
このときによだれが多くなる理由は、脳神経の異常によって唾液分泌が過剰になること、または神経麻痺などで口が閉じられなくなることによってよだれをうまく飲み込めなくなることです。
呼吸器系
呼吸器系には次のような病気が含まれます。
・咽頭部の炎症
・咽頭麻痺
咽頭麻痺では、よだれをうまく飲み込めないことで口の外によだれが流れ出てしまうのが特徴です。
感染症系
感染症系には次のような病気が含まれます。
・狂犬病
・ジステンパー
この2つはワクチンで予防することができます。
老犬の異常なよだれに気づいたときに飼い主がやるべきこと
上記では、老犬のよだれが増える原因について解説しました。そのうえで「異常なよだれにいち早く気づくにはどうしたらいいの?」「異常なよだれに気づいた後はどうするのがいいの?」と疑問に思った飼い主さんが多いことでしょう。
そこでこの章では、老犬の異常なよだれに気づいたときに飼い主さんがやるべきことについて順を追って説明していきます。
よだれ以外の症状をチェックする
「いつもよりよだれの量が多い」という異変を感じたら、まずは他の症状をチェックしましょう。このとき、特徴的な症状が見られた場合は原因を特定できるかもしれません。
しかし、原因が違っていても同じ症状が現れる場合も多く、素人の飼い主さんが正確に判断するのは難しいものです。そのため、とりあえずよだれの量が増えた以外に、以下の症状が見られた場合はできるだけ早く動物病院を受診するようにしましょう。
・呼吸が荒い
・元気がない
・嘔吐している
・よだれに血がまじっている
・口臭がする、よだれが臭い
・血便が出た
・吐きそうにしているが、吐けないでいる
・腹部が膨れている
・呼びかけに応じない、意識がない
・口角が下がっている
・ぐったりしている
・フラフラ歩く
・泡のようなよだれを出す
・痙攣発作をおこしている
異常なよだれの原因に対して適切な対処をする
よだれ以外の症状をチェックした後は、動物病院に連れて行きます。しかし、その間にも「苦しそうな愛犬のために何かできないだろうか?」と考える飼い主さんも多いことでしょう。
そこで、動物病院に行くまでにやった方がよいこと、やらない方がよいことをそれぞれの原因ごとに説明します。
やった方がよいこと | やらない方がよいこと | |
熱中症 | 体を冷やす | 急激に冷やし過ぎる |
異物の誤飲 | 飲み込んだものの破片があれば病院に持っていく | 手を突っ込んで吐かせる |
誤食による中毒 | 食べたものが分かる場合はどれだけ食べたのかを把握する | 塩を使って吐かせる |
危険な生物 | 大量の水で洗う | 人にとっても毒なので素手で患部や洗浄水に触らない |
口内のケガ | 口の中の状態をチェックする | 刺さっているものを、無理やり取り除こうとする |
動物病院を受診する
やっと動物病院に着いて、獣医師に見てもらおうと思ったときには症状がおさまっているということも少なくありません。そのために、正確な診断をされないという状況は避けたいものです。
そこでおすすめしたいのが、動画を撮ること。
よだれの状態やそのほかの症状についての映像があれば、口ではなかなか伝わらないことも伝えられるし、獣医師の判断材料を増やすことにもつながります。
とはいえ「動画を撮る暇があったら、早く病院で診察してもらったほうがいいんじゃないの?」と思う飼い主さんもいるでしょう。その考えは間違っていません。
しかしてんかん発作が起きている場合は、むやみに手を出すと噛みつかれる可能性があるため、発作中は見守る必要があります。よって、てんかんの際は待ち時間を活用して動画を撮っておくとよいでしょう。
まとめ:老犬の異常なよだれに気づいたら動物病院へ
この記事では、老犬の正常なよだれと異常なよだれについて紹介した上で、老犬の異常なよだれに気づいたときに飼い主がやるべきことについて解説しました。
老犬の異常なよだれをそのままにしておけば、最悪の場合、死に至るケースもあることが分かったかと思います。老犬のトラブルのサインにいち早く気づき、すぐに動物病院を受診することが大切です。
そうすれば、体の機能が落ちている老犬であってもまだまだ元気に過ごしてくれるでしょう。
体調が急変しやすい老犬のためにも、スムーズに冷静に対処できるよう、この記事を参考に実践してみてください。
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